ベトナムは、若い労働力と製造業への継続的な投資を背景に、部品調達先として存在感を高めています。一方で、「ベトナム人は手先が器用だから品質も高い」と一括りにするだけでは、調達先の実力を正しく判断できません。安定した品質を生むのは、作業者個人の素質だけではなく、教育、標準作業、検査、変更管理を工場全体で運用できる仕組みです。本記事では、ベトナム製造業の人材面の強みを公的資料と当社の現場経験から整理し、部品調達で失敗しないための工場選定と品質管理のポイントを解説します。

ベトナム製造業を支える若い人材と、その強み
若い労働力が製造業の成長を支えている
JETROによると、ベトナムでは15~49歳の労働力が総労働力の約7割を占めています(出典1)。また、世界銀行によると、2025年上半期の製造業は前年同期比10.1%増となり、2025年5月の製造業雇用も前年同月比5.1%増でした(出典2)。若い人材が豊富であることに加え、製造業そのものが拡大している点が、ベトナムの生産拠点としての強みです。
当社が訪問した工場でも、20~30代の作業者や技術者が設備操作、測定、検査を担う現場を確認してきました。ただし、年齢が若いことだけで品質が決まるわけではありません。教育の仕組み、作業標準、管理者の指導力まで含めて確認することが重要です。
「器用さ」を安定品質へ変えるのは、教育と標準化
ベトナムには刺繍、陶芸、漆工芸、竹細工など、細かな手作業を伴う文化があります。しかし、伝統文化を根拠にすべての作業者を「器用」と評価することはできません。部品加工で見るべきなのは、図面を理解し、決められた工程を守り、測定結果を記録して改善につなげられるかどうかです。
ILOは、技能開発が生産性の向上と高い品質基準の確保に重要だとしています(出典3)。つまり、採用時の素質だけでなく、入社後の訓練や現場での技能継承が、品質を左右します。当社でも、試作時の認識合わせ、作業手順の明文化、検査結果の確認を重視しています。
国籍ではなく、工場の管理力で調達先を選ぶ
JETROは、日系・日本企業が求める品質レベルの部品を供給できる可能性が高いベトナム企業について、現場環境、製品、経営者・工場長へのヒアリングを踏まえて評価しています(出典4)。この考え方は、実際のサプライヤー選定でも有効です。設備の新しさや見積価格だけでなく、5S、測定機器、検査記録、不適合品の隔離、是正処置、教育記録まで確認する必要があります。
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製造現場で直面する課題と解決のポイント
個々の作業者が高い技能を持っていても、工場の仕組みが整っていなければ品質は安定しません。海外部品調達では、次の課題を工場と発注側の双方で管理する必要があります。
自己判断による品質のばらつき
作業標準や変更管理が曖昧な工場では、担当者が善意で手順を変えた結果、ロットごとの品質差が生じることがあります。国籍にかかわらず、図面・手順書・承認条件を明文化し、変更時には責任者の承認を得る運用が必要です。
こうした課題を防ぐには、標準作業手順書を整備し、作業手順を明確に文書化することが重要です。「なぜこの手順で作業しなければならないのか」という理由も合わせて説明することで、ワーカーの納得感が高まり、手順の遵守率が上がります。
図面の解釈ミス
日本の図面には、国内取引の経験を前提にした省略や暗黙の了解が含まれる場合があります。海外工場との取引では、図面の読み方や公差の解釈に認識差が生じる可能性があり、「これは当然こう作るはず」という前提が通用しないケースがあります。その結果、完成品を見てみると「寸法は合っているけど、仕上げが違う」「指定した表面粗さになっていない」といった問題が発生することがあります。
ベトナム向けの図面では、「何のためにこの寸法・仕上げが必要なのか」という意図まで伝えることが重要です。また、試作段階でサンプルを確認し、双方の認識を合わせてから量産に移行するプロセスを徹底することで、図面解釈のミスを防ぐことができます。
品質管理レベルのばらつき
工場によって、また担当者によって、品質への意識にばらつきがあります。「検査をパスすればOK」という意識と、「そもそも不良品を出さない」という意識では、現場の品質レベルが大きく異なります。特に、初めてベトナム調達を行う企業が陥りやすいのが、「価格だけを基準にサプライヤーを選ぶ」というミスです。安さだけを追求すると、品質意識の低い工場を選んでしまうリスクが高まります。
サプライヤーを選定する際には、価格だけでなく、品質管理体制をしっかりと確認することが重要です。測定機器の有無、検査記録の管理方法、不良品発生時の対応フローなどを事前にチェックすることで、品質トラブルのリスクを大幅に低減できます。
コミュニケーションの壁
言語の違いによるコミュニケーションの壁は、品質問題の大きな原因の一つです。仕様変更の伝達ミス、トラブル発生時の報告遅れ、細かいニュアンスが伝わらないといった問題は、言語の壁がある限り避けられません。
日本語またはベトナム語に堪能なコーディネーターを間に挟むことで、コミュニケーションのリスクを大幅に低減できます。特に、図面の解釈や品質基準の伝達など、細かいニュアンスが重要な場面では、専門的な通訳が不可欠です。
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ベトナム海外調達のススメ
ベトナム調達を検討する際は、国全体の成長性だけで判断せず、加工方法、材質、ロット、要求精度、納期に合う工場を選ぶことが重要です。まず全体像を把握し、そのうえで自社の調達条件に近いテーマを確認してください。
海外部品調達が進む背景とは?
海外部品調達は、単なるコスト削減策ではありません。国内仕入先の廃業、技術承継の難しさ、1社依存による供給停止リスクへの備えとして、調達先を複線化する役割が大きくなっています。検討段階に応じて、次の記事もご覧ください。
いわいだからこそ可能な海外部品調達
ベトナムの人材や設備の強みを安定した品質につなげるには、工場任せにせず、試作から量産、検査、納品までの管理条件をそろえる必要があります。株式会社いわいでは、お客様の要求仕様と加工内容に合わせて、次の体制で海外部品調達を支援しています。
量産前の試作・承認プロセス
量産に入る前に試作品を製作し、お客様の承認後に量産へ移行します。図面の解釈、外観、測定方法、品質基準の認識を試作段階で合わせ、「想定していたものと違う」という量産後の手戻りを防ぎます。
検査工程の見える化
Zoomを活用したリアルタイム検品により、日本からベトナム工場の測定・検査状況を確認できます。ノギスやマイクロメーターによる測定結果を納品前に共有し、必要に応じてその場で確認事項を伝えます。
契約・機密情報の管理
図面や技術情報を扱うため、協力工場との秘密保持契約を前提に運用しています。価格や納期だけでなく、情報管理の体制も確認したうえで取引を進めます。
加工内容に応じた工場選定
旋盤、マシニング、板金、溶接、表面処理など、必要な加工と要求精度に応じて協力工場を選定します。1社ですべてを賄うのではなく、工程ごとの得意分野や品質管理体制を見極めて調達ルートを組み立てます。
日本語での調整窓口
お客様とベトナム工場の間に入り、図面の解釈、仕様変更、納期、検査内容を日本語で調整します。細かなニュアンスを口頭だけに頼らず、図面・手順・検査記録へ落とし込むことで、認識違いを減らします。
ベトナム部品調達の成否は、作業者の「器用さ」だけでなく、標準化と検査、コミュニケーションを継続できる管理体制で決まります。工場選定から品質確認まで一貫して進めたい場合は、株式会社いわいへご相談ください。
動画で見る、ベトナム調達の現場
高精度検査治具と加工技術
ロストワックスの製造工程
金属・樹脂の海外加工パートナー

実際にいわいが海外で調達した製品事例をご紹介
続いて、実際に当社がベトナムをはじめとした海外で調達した精密部品の製品事例をご紹介いたします。
空圧機器用六角プラグ

この製品は、品質を担保するために、材料に日本製の真鍮(C3604)を使用することが必須条件でした。そのためご相談前のお客様は、コストが割高になる国内での生産を余儀なくされていました。
そこで当社では、お客様の指定する日本製の材料をベトナムに輸入し、現地で製造するというスキームをご提案。これにより、品質条件を満たしたまま、大幅なコストダウンを実現しました。
クランプブロック

このクランプブロックの調達において、お客様は深刻なサプライチェーンの問題に直面していました。近年、国内では黒染め処理に対応できる加工業者が年々減少しており、「精密なマシニング加工」から「繊細な表面処理」までを一貫して任せられるサプライヤーが、国内では見つからなくなってしまったとのことでした。
この将来的なお悩みに対し、当社はベトナムの提携工場での「一貫生産」をご提案いたしました。加工から表面処理までを別々の企業で行う場合、工程間の輸送で傷がつくリスクや、品質管理の分断といった問題が避けられません。しかし当社では、マシニング設備を保有する加工業者と、黒染め処理設備を保有する表面処理業者と、それぞれで最適なパートナー企業を選定いたしました。これにより、当社による一元的な品質管理体制の下で、移動に伴う品質リスクを抑えるにし、お客様の厳しい要求をクリアすることが可能となります。
A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

アルミ(A6061)製のマニホールドブロックです。マシニング加工後、アルマイト処理を施して仕上げています。
この製品は、機能面・外観面において、一切の傷が許されないという非常に厳しい品質基準が設けられていました。そのためお客様は、品質が安定し、かつ信頼できる検査体制を持つサプライヤーを求めていらっしゃいました。
この厳格な品質要求に対し、当社はベトナムパートナーが持つ高度な品質保証体制でお応えました。
水処理機械用 カップリング

こちらは、水処理機械に使用されるステンレス(SUS304)製のカップリングです。高精度な四角穴(公差:-0, +0.05)の加工が特徴です。
今回のご相談は、お客様が直面していた、深刻な事業継続の課題から始まりました。まず、長年この部品を供給していた国内の仕入先が廃業してしまい、代替となるサプライヤーが見つからず、やむなくお客様が自社での内製化に踏み切りました。しかし、その頼みの綱であった社内の加工部門も、深刻な人手不足により、担い手がいなくなってしまうという危機的な状況に陥っていました。
お客様が「新たな職人を探して採用するしかない」とまでお考えだった、この「人手不足」という経営課題に対し、当社は海外での一貫生産をご提案いたしました。
超々ジュラルミン製 分配ブロック

こちらは、機械部品として使用されるアルミ(超々ジュラルミン:A7075-T651)製の分配ブロックです。直角度0.01、平行度・平面度0.02、さらにはH7の穴公差など、複数の厳しい幾何公差が求められる、高精度なマシニング加工品でした。
この製品の最大の課題は、A7075-T651という特殊な材質にありました。お客様はこれまで、「この材料は、専門業者でなければ材料入手も加工も不可能だ」とお考えでしたが、そのためアルミダイカスト専門業者にサプライヤーが限定されることで、コストが高止まりしている状況にありました。
この長年の課題に対し、当社はベトナムの提携工場でのワンストップ生産をご提案いたしました。当社の幅広いネットワークを駆使することで、特殊なA7075材の安定調達ルートを確保することも可能です。さらに、高い技術力を持つパートナー企業にて、材料調達から高精度なマシニング加工、黒アルマイト処理、そして精密検査までを一貫して行うことで、大幅なコストダウンを実現いたしました。
お客様からは、「専門業者しか扱えない」という長年の思い込みが覆され、品質を維持したまま、これほど大きなコストダウンが実現できたことに、驚きと喜びの声をいただいております。
組立冶具(エア便 特急対応)

生産ラインで使用されるアルミ(A2017)製の組立治具です。今回は「受注後5日間」という、極めて短い納期でのご依頼でした。
今回のお客様は、急な仕様変更により、組立治具が特急で必要となったとのことでした。しかし、海外調達では船便輸送が基本となるため、このような超短納期での対応は不可能だとお考えでした。
この「特急対応」という非常に高いハードルのご要望に対し、当社はベトナムでの製造と、輸送手段を航空便(エア便)に切り替えるというスキームをご提案いたしました。製造から出荷までを最優先で進め、航空便を活用することで、受注からわずか5日間という、国内調達と変わらないスピードでお客様の元へ製品をお届けすることに成功しました。
丸頭特殊ボルト

機械部品として使用されるSUJ2製の丸頭特殊ボルトです。冷間加工で成形され、真球度S0.03という極めて高い精度が求められます。
このお話は、お客様が長年取引していた国内の冷間加工メーカーが廃業してしまい、この特殊ボルトのサプライチェーンが完全に途絶えてしまったという、深刻なご相談から始まりました。特に、SUJ2という材質の冷間加工と、その後の高周波焼入れまでを一貫して対応できる、高い技術力を持ったサプライヤーであったため、代替先を見つけるのは絶望的な状況でした。
この危機的な状況に対し、当社はベトナムでのワンストップ生産をご提案。当社のネットワークを駆使し、SUJ2材の冷間加工に対応できるだけでなく、現地で高周波焼入れまで一貫して行えるという、お客様の要求に対応できるパートナー企業をベトナムにて選定し、お客様とマッチングして解決いたしました。
丸頭特殊ボルトアッセンブリ

こちらは、特殊ボルト(SCM440他)と複数の部品からなる、丸頭特殊ボルトアッセンブリです。各種サイズを取り揃え、最終の梱包まで含めたOEM供給に対応しています。
このお話は当初、お客様が取引していた国内の部品メーカーが廃業してしまい、構成部品である「特殊ボルト単品」の調達先を探している、というご相談から始まりました。
しかし、当社がお話をお伺いする中で、お客様がその特殊ボルトを調達後、他の部品と組み合わせて社内で組立・梱包作業を行っており、その工数や管理コストが大きな負担となっていることが分かりました。そこで当社は、単にボルト単品を製造するのではなく、関連部品の調達から組立、梱包までをすべて一貫して海外で行う「アセンブリ供給」をご提案いたしました。組立工程の半自動化なども含めた、トータルコストダウンのスキームを設計いたしました。
ベトナムからの部品調達代行はいわいにお任せください
日本の製造業は今、これまでにない構造的な転換点を迎えています。少子高齢化による後継者不足、長年蓄積されてきた技術の継承停滞、さらには仕入れ先の廃業や撤退といったリスクが現実のものとなりつつあります。これにより、これまで当たり前とされてきた国内中心の調達体制が揺らぎ始め、調達のあり方そのものを見直す必要性が高まっているのです。こうした環境変化の中、いわいは「これからの時代に本当に信頼できる調達パートナー」として選ばれています。
当社が提案する海外調達の中心は、ものづくりの拠点として近年著しい成長を遂げているベトナムです。しかし、いわいのベトナム調達は単なるコスト削減の手段ではありません。品質・納期・供給体制といった調達全体の信頼性を重視し、安心して利用できる仕組みを構築しています。現地企業との継続的な信頼関係を土台に、契約・財務面の実務にも強みを発揮。さらに、日本の製造現場で求められる品質基準を深く理解したパートナー企業の選定を徹底することで、国内と同等の品質を安定的に提供することが可能となっています。
また、いわいは単なる部品の調達にとどまらず、設計段階から製造までを一貫して支援する体制を整えています。図面のデータ化やペーパーレス化、設計サポートなどの上流工程から、部品製造・調達までをワンストップで対応。国内外のCADオペレーターと連携し、スピーディかつ正確な設計・製造プロセスを実現しています。これにより、お客様の設計意図を確実に反映させた部品を短納期で供給し、開発スピードと品質の両立が可能に。さらに、DXを活用した調達体制により、手間やコストを最小限に抑えながら、高効率かつ高精度な部品調達ができます。
ベトナムをはじめとした海外からの部品調達を検討されている企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
出典
- JETRO|「ベトナムの現状と今後の動向から見る有望産業について(2026年3月)」|引用箇所:H2「ベトナム製造業を支える若い人材と、その強み」の15~49歳の労働力構成|確認日:2026年10月14日|https://www.jetro.go.jp/world/reports/2026/02/61a5971253c22b08.html
- World Bank|「Taking Stock: Nurturing Viet Nam’s High-Tech Talents」|引用箇所:H2「ベトナム製造業を支える若い人材と、その強み」の2025年上半期の製造業成長率と2025年5月の製造業雇用|確認日:2026年10月14日|https://documents1.worldbank.org/curated/en/099133509042513941/pdf/IDU-0d5c6542-bd71-4685-afd7-f02b835bc36c.pdf
- 国際労働機関(ILO)|「Towards a skills strategy for the textile and garment industry in Viet Nam」|引用箇所:H2「ベトナム製造業を支える若い人材と、その強み」の技能開発と生産性・品質の関係|確認日:2026年10月14日|https://www.ilo.org/vi/resource/article/t%E1%BB%95-ch%E1%BB%A9c-lao-%C4%91%E1%BB%99ng-qu%E1%BB%91c-t%E1%BA%BF-ilo-v%C3%A0-%C4%91%E1%BB%91i-t%C3%A1c-c%C3%B4ng-b%E1%BB%91-hai-b%C3%A1o-c%C3%A1o-quan-tr%E1%BB%8Dng
- JETRO|「ベトナム裾野産業『優良企業』」|引用箇所:H2「ベトナム製造業を支える若い人材と、その強み」の工場訪問・現場確認・ヒアリングによる評価|確認日:2026年10月14日|https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/company.html