「うちの工場、今は大丈夫ですよ。ベテランがいるから」、と確信している仕入先の経営者に、何度出会ったことでしょう。ただ、この言葉ほど危険なものはないな、なんて思います。なぜなら「今」は問題なくても、そのベテランが引退した瞬間、その工場の生産能力は急速に低下するからです。そして、大丈夫と思っている企業ほどバックアッププランがなかったりするので、一気に事業停滞をしてしまいます。そういったことをどうしたら防ぐことができるのかを今回は解説していきます。

1.なぜ今、「技術者不足」が部品調達の経営リスクになるのか?
熟練技術者の高齢化と後継者不在という二重の壁
日本の製造業が直面しているのが、二重の課題です。第一に、熟練技術者の高齢化です。多くの下請け工場の職人は60代から70代に達し、現役での稼働時間が限定的になっています。第二に、その高齢化した職人たちにとっての後継者がいないことです。若い世代が製造業を選ばず、その工場の後継者候補がいないまま、ベテランの引退日が近づいているのです。つまり「今、この工場を支えているベテランが引退したら、その工場は機能しなくなる可能性がある」というリスクが、全国の中小工場に広がっているのです。今、取引されている工場の実情はいかがでしょうか?まさに、年齢層や人の数がこれにあたるのではないでしょうか。
後継者リスクや技術承継問題についてはこちらのコラムで詳しく解説しております。
>>技術承継問題とは?製造業の調達担当者が知っておきたい供給リスクと海外調達
>>技術承継問題を、海外部品調達で解決する!
「今は困っていない」が一番危ない理由
今現時点ではまだ困っていないという人がほとんどかと思います。実際に、多くの調達担当者は「今のところ納期も品質も問題ない」という理由で、現在の仕入先に依存し続けています。ただ、このコラムに辿り着いたからこそ、「困っていない段階でバックアップの計画を準備しておくことがいかに大事か」についてお伝えできればと思います。
「今は困っていない」という理由で何もしないその判断は長期的計画にはならないのです。なぜなら、その工場のベテランが引退するのは「数年後」かもしれないからです。その時点で初めて「あ、品質が落ちた」「納期が延びた」と気づく人も多いでしょう。しかし、その時は既に遅すぎるのです。引退してからでは、新しい技術者の育成には年単位の時間が必要であり、その間、調達担当者は対応に追われることになります。つまり「今は問題ない」という現状認識こそが、一つの大事なステップになります。
こちらのコラムでは、1社購買リスクについて詳しく解説しております。
>>1社購買リスクとは?製造業の調達担当者が知っておくべき回避策と戦略的調達の進め方
2.技術者不足が加工現場でどう表面化するか?
旋盤・研磨など「感性」「技術」に頼る工程ほど影響が大きい
技術者不足の影響は、工程によって異なります。完全に自動化された加工は、プログラムさえあれば、経験が少ない作業者でも対応できます。ところが、旋盤や研磨のような人間の「感性」「技術」に頼る工程では、経験豊富な職人の存在が不可欠です。微妙な力加減、振動の感じ方、表面の仕上がり具合、こうした「感覚的な判断」が品質を作るものだからです。経験が浅い作業者がこうした工程を担当すると、不良率が急増します。特に難加工品や精密部品では、その影響は顕著です。
図面に書けない暗黙知が、担当者の退職と共に消える
さらに深刻なのが、現場内のみで共有されている知見などの喪失です。「この加工の場合、こういう手順でやると上手くいく」「この材料の時は、この速度で加工する」といった工程管理の工夫が、図面には全く記載されていないまま、職人の頭の中だけに存在しているのです。その職人が引退すると、その知識は完全に失われます。もちろん、あとから引き継ぎ書などを作ったり、数日の引き継ぎ期間を設けることは表面的には可能ではありますが、実際何年にも渡る試行錯誤の結果を短期的にシステマティックに完全共有することは難しいのが現実です。そのため、新しい職人は、一から試行錯誤をして、その工程管理の方法を「再発見」する必要が生じるのです。その過程で、品質ロスが発生し、納期が延び、コストが上がるといった悪循環が生まれるわけです。
3.部品調達担当者が直面する3つの実務課題
納期の長期化
技術者不足が表面化すると、まず納期が延びます。新しい技術者では、どうしても作業のスピードは熟練工に比べたら遅くなってしまいますし、試行錯誤の時間が増えるためです。結果として今までの所要時間に加えて数週間、とくには数ヶ月が加算されるという事態が起きるのです。納期が延びれば、その分、自社の生産計画も狂い、顧客への納期も延びることになります。
加工コストの上昇
新しい技術者は、いわゆる会社での新人のような状態であることからも、作業効率がまだ低く、不良率もどうしても高くなってしまいます。その結果として、工場側のコストが上昇し、その分、調達単価が引き上げられます。また、品質トラブルが多くなれば、手直しコストも発生し、全体の調達コストが跳ね上がるのです。何年間も調達をみてきて思うのは、コスト上昇は「調達先の努力不足」ではなく「構造的な問題」だということです。技術者がいないのに、品質と納期を維持しようとすれば、どうしてもコストが上がるのです。
特定業者への依存とBCPの脆弱性
これまで「この工場は技術力が高いから」という理由で、その工場に依存してきた企業は、技術者不足の影響を受けます。なぜなら、その工場の技術力は「現在のベテラン職人の個人的能力」に依存していたからです。ベテランがいなくなれば、その「技術力の高さ」も消えてしまうのです。その時点で初めて、その工場への依存は「BCP上、極めて脆弱」だったことに気づくのです。
こちらのコラムではBCPについて詳しく解説しているので併せてご確認ください。
>>グローバルサプライチェーンとは?国内一極依存のリスクと海外調達への移行手順
>>サプライチェーン断絶に備え、製造業が今すぐ着手すべき海外調達とBCP対策
4.技術者不足時代における部品調達先の選定ポイント
「今の技術者」ではなく「その先」を見て選ぶ
技術者不足時代の調達先選定では、視点を変える必要があります。従来は「この工場は技術者が優秀だ」という現在の状態を評価していました。
しかし今、重要なのは「その先」です。つまり「今のベテランが引退した後も、この工場は技術水準を保つことができるのか」という問いです。その答えを見極めるために、若手技術者の育成が計画的に行われているか、技術の承継が図面化やマニュアル化されているか、新しい世代のモチベーションは高いか、こういった視点から、その工場の「持続可能性」を判定する必要があります。
若手技術者・最新設備への投資状況を確認する
現地を訪問する際、確認すべき項目があります。工場に若い世代の技術者がいるか、最新の設備に投資しているか、技術の教育体制が整備されているかといった点を見ることで「この工場は技術者不足に対応する意思と能力があるか」が判明するのです。逆に、どんなに現時点の評価が高くて熟練した成果品に長けていたとしても、高齢の職人ばかりで、設備が老朽化し、若い人がいない工場は「その工場の未来は短い」という判定ができるのです。
ベトナムなどの海外工場は、この点で優位性を持つということです。労働力が若く、新しい設備への投資も進んでいる。つまり「技術者不足による衰退」という日本の課題が、海外には(少なくとも短期的には)ないのです。それでも、各国の調達先について「技術者の層の厚さ」を確認することは重要です。若手が育成され、技術承継が行われている工場は、長期的に付き合える工場です。逆に「ベテランが全て」という工場は、どの国であっても「一時的な関係」に過ぎないのです。技術者不足は、個々の企業の問題ではなく、日本の製造業全体の課題です。その課題に対応する調達戦略とは、「今の調達先の技術力」ではなく「その先も技術力を保つことができるか」を見極める力なのです。
その視点を持つことで初めて、調達担当者は「持続可能な仕入先ポートフォリオ」を構築することができるのです。

「国内品質×海外調達」を実現!海外協力工場の実力を、映像でご確認ください!
実際にいわいが海外で調達した製品事例をご紹介
続いて、実際に当社がベトナムをはじめとした海外で調達した精密部品の製品事例をご紹介いたします。
空圧機器用六角プラグ

この製品は、品質を担保するために、材料に日本製の真鍮(C3604)を使用することが必須条件でした。そのためご相談前のお客様は、コストが割高になる国内での生産を余儀なくされていました。
そこで当社では、お客様の指定する日本製の材料をベトナムに輸入し、現地で製造するというスキームをご提案。これにより、品質条件を満たしたまま、大幅なコストダウンを実現しました。
クランプブロック

このクランプブロックの調達において、お客様は深刻なサプライチェーンの問題に直面していました。近年、国内では黒染め処理に対応できる加工業者が年々減少しており、「精密なマシニング加工」から「繊細な表面処理」までを一貫して任せられるサプライヤーが、国内では見つからなくなってしまったとのでした。
この将来的なお悩みに対し、当社はベトナムの提携工場での「一貫生産」をご提案いたしました。加工から表面処理までを別々の企業で行う場合、工程間の輸送で傷がつくリスクや、品質管理の分断といった問題が避けられません。しかし当社では、マシニング設備を保有する加工業者と、黒染め処理設備を保有する表面処理業者と、それぞれで最適なパートナー企業を選定いたしました。これにより、当社による一元的な品質管理体制の下で、移動に伴う品質リスクをゼロにし、お客様の厳しい要求をクリアすることが可能となります。
A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

アルミ(A6061)製のマニホールドブロックです。マシニング加工後、アルマイト処理を施して仕上げています。
この製品は、機能面・外観面において、一切の傷が許されないという非常に厳しい品質基準が設けられていました。そのためお客様は、品質が安定し、かつ信頼できる検査体制を持つサプライヤーを求めていらっしゃいました。
この厳格な品質要求に対し、当社はベトナムパートナーが持つ高度な品質保証体制でお応えました。
水処理機械用 カップリング

こちらは、水処理機械に使用されるステンレス(SUS304)製のカップリングです。高精度な四角穴(公差:-0, +0.05)の加工が特徴です。
今回のご相談は、お客様が直面していた、深刻な事業継続の課題から始まりました。まず、長年この部品を供給していた国内の仕入先が廃業してしまい、代替となるサプライヤーが見つからず、やむなくお客様が自社での内製化に踏み切りました。しかし、その頼みの綱であった社内の加工部門も、深刻な人手不足により、担い手がいなくなってしまうという危機的な状況に陥っていました。
お客様が「新たな職人を探して採用するしかない」とまでお考えだった、この「人手不足」という経営課題に対し、当社は海外での一貫生産をご提案いたしました。
超々ジュラルミン製 分配ブロック

こちらは、機械部品として使用されるアルミ(超々ジュラルミン:A7075-T651)製の分配ブロックです。直角度0.01、平行度・平面度0.02、さらにはH7の穴公差など、複数の厳しい幾何公差が求められる、高精度なマシニング加工品でした。
この製品の最大の課題は、A7075-T651という特殊な材質にありました。お客様はこれまで、「この材料は、専門業者でなければ材料入手も加工も不可能だ」とお考えでしたが、そのためアルミダイカスト専門業者にサプライヤーが限定されることで、コストが高止まりしている状況にありました。
この長年の課題に対し、当社はベトナムの提携工場でのワンストップ生産をご提案いたしました。当社の幅広いネットワークを駆使することで、特殊なA7075材の安定調達ルートを確保することも可能です。さらに、高い技術力を持つパートナー企業にて、材料調達から高精度なマシニング加工、黒アルマイト処理、そして精密検査までを一貫して行うことで、大幅なコストダウンを実現いたしました。
お客様からは、「専門業者しか扱えない」という長年の思い込みが覆され、品質を維持したまま、これほど大きなコストダウンが実現できたことに、驚きと喜びの声をいただいております。
組立冶具(エア便 特急対応)

生産ラインで使用されるアルミ(A2017)製の組立治具です。今回は「受注後5日間」という、極めて短い納期でのご依頼でした。
今回のお客様は、急な仕様変更により、組立治具が特急で必要となったとのことでした。しかし、海外調達では船便輸送が基本となるため、このような超短納期での対応は不可能だとお考えでした。
この「特急対応」という非常に高いハードルのご要望に対し、当社はベトナムでの製造と、輸送手段を航空便(エア便)に切り替えるというスキームをご提案いたしました。製造から出荷までを最優先で進め、航空便を活用することで、受注からわずか5日間という、国内調達と変わらないスピードでお客様の元へ製品をお届けすることに成功しました。
丸頭特殊ボルト

機械部品として使用されるSUJ2製の丸頭特殊ボルトです。冷間加工で成形され、真球度S0.03という極めて高い精度が求められます。
このお話は、お客様が長年取引していた国内の冷間加工メーカーが廃業してしまい、この特殊ボルトのサプライチェーンが完全に途絶えてしまったという、深刻なご相談から始まりました。特に、SUJ2という材質の冷間加工と、その後の高周波焼入れまでを一貫して対応できる、高い技術力を持ったサプライヤーであったため、代替先を見つけるのは絶望的な状況でした。
この危機的な状況に対し、当社はベトナムでのワンストップ生産をご提案。当社のネットワークを駆使し、SUJ2材の冷間加工に対応できるだけでなく、現地で高周波焼入れまで一貫して行えるという、お客様の要求を完璧に満たすパートナー企業をベトナムにて選定し、お客様とマッチングして解決いたしました。
丸頭特殊ボルトアッセンブリ

こちらは、特殊ボルト(SCM440他)と複数の部品からなる、丸頭特殊ボルトアッセンブリです。各種サイズを取り揃え、最終の梱包まで含めたOEM供給に対応しています。
このお話は当初、お客様が取引していた国内の部品メーカーが廃業してしまい、構成部品である「特殊ボルト単品」の調達先を探している、というご相談から始まりました。
しかし、当社がお話をお伺いする中で、お客様がその特殊ボルトを調達後、他の部品と組み合わせて社内で組立・梱包作業を行っており、その工数や管理コストが大きな負担となっていることが分かりました。そこで当社は、単にボルト単品を製造するのではなく、関連部品の調達から組立、梱包までをすべて一貫して海外で行う「アセンブリ供給」をご提案いたしました。組立工程の半自動化なども含めた、トータルコストダウンのスキームを設計いたしました。
海外部品調達代行はいわいにお任せください!
長年頼りにしてきた国内サプライヤーの突然の廃業リスクは、もはや従来の対策だけでは防ぎきれません。今こそ、事業を止めないためのBCP戦略としての「海外調達」が注目されています。
いわいは、独自の「日本品質」基準でのサプライヤー選定をはじめ、部品加工から組立・梱包までのワンストップ対応、Zoom検品による確実な品質保証により、初めての海外調達でも安心の体制を構築します。貴社の生産ラインを廃業リスクから守り、「途切れない供給」と「調達担当者様の安心」を実現する海外部品調達代行は、いわいにお任せください。


