調達担当者とお話しをする際、「この工場がなくなったらどうなってしまうんだろう」という懸念点をよく耳にしてきました。そして実際に、取引先が廃業してしまうことも現実的にありました。さらには、仕入先の廃業通知は突然やってくるので、こういった悩みは人事ではなくなってきました。
前回のコラムでは、技術承継問題がいかに深刻であるか、そしてなぜ国内での代替先探索が難しいのかを解説しました。ただし、これは「絶望的な状況だ」という話ではなく、むしろ「対応策がある」ということを理解するための前置きであり、実際に海外調達がいかにポイントになってくるかまでお伝えしました。今回は、実際に技術承継問題に直面した調達担当者が、海外部品調達を通じて、どのように供給リスクを解消できるのかを、具体的に解説します。
1. 技術承継問題とは何か?
前回述べたように、技術承継問題とは、熟練技術者の退職に伴い、その技能が次の世代に十分に承継されない状況を指します。これは単なる人口動態の問題ではなく、サプライヤーの廃業や品質低下に直結する経営リスクなのです。
そして、この問題の厄介さは、それが突然やってくることです。廃業予告もなく、ある日突然「閉業します」という連絡が来るケースも稀ではありません。その時点で、ビジネスの継続性が脅かされるわけです。
2. なぜ技術承継問題は、調達リスクになるのか?
技術承継問題によるサプライヤー廃業は、どのくらいの頻度で起きている?
正確な統計を把握することは難しいですが、実感としては、毎月、どこかの業界で重要な部品工場の廃業ニュースが聞こえてくるような状況です。
我々の顧客ネットワークでも、過去3年間に3社の仕入先廃業を経験しています。いずれも経営者の高齢化、後継者不足が原因でした。
つまり、技術承継問題は、低確率の遠い未来の話ではなく、今そこにある脅威なのです。
3. 海外部品調達は「コスト削減策」ではなく「BCP戦略」になっている
海外調達はコスト削減が主な目的ではない!?
かつて、海外調達は「いかに安く仕入れるか」というコスト最適化の話でした。しかし、今、その位置づけは大きく変わっています。
海外調達の主な目的は、技術承継問題に対する「経営リスク対策」に変質しているのです。つまり、コスト削減は副次的なメリットであり、本来の狙いは「供給の安定化」にあるわけです。
営業から「海外調達を進めてほしい」という相談を受けた時、私も入社して間もない頃は「コスト削減の話か」と思ってしまっていました。でも、詳しく聞いてみたら「現在の仕入先が2年以内に廃業する可能性が高い」という深刻な背景があることが分かりました。その時に初めて「海外調達って、単なる効率化じゃなくて、生存戦略という位置付けなのか」と気づきました。
国内一極集中から複線化へ—リスク分散の考え方
技術承継問題への対応として、海外調達を活用する場合、重要な戦略が「複線化」です。
つまり、国内の危険が高い仕入先については、同時に海外での製造体制を整備する。そうすることで、国内の工場が廃業しても、ビジネスは継続できるという体制を作るのです。
このアプローチは、決してドラスティックなものではありません。まずは、危ない仕入先の一定数の発注を海外に振る。その工場の能力を確認しながら、段階的に依存度を高めていく。こうした段階的なアプローチにより、リスクを最小化しながら複線化を実現できます。
4. 技術承継問題を抱えた調達担当者が、海外部品調達で得られる3つの変化
変化①:供給リスクが分散する
最も直接的な効果が、供給リスクの分散です。
これまでは「この工場がダメになったら終わり」という、極度の不安定性を抱えていました。海外調達で複線化することで、その不安は大きく軽減されます。
国内工場が廃業しても、海外の工場がある。その知識だけで、心理的な余裕が生まれるのです。そして、その余裕が、冷静な経営判断を可能にします。
変化②:部品調達から組立・梱包まで一貫対応でコストと工数が下がる
ここが見落とされることが多いのですが、海外調達の大きなメリットの一つです。
国内の部分加工工場との取引では、各プロセスが分断されていることが多いです。加工、検査、梱包、それぞれが別の企業であり、その度に調整が必要です。
一方、海外調達では、部品加工から組立、梱包まで一貫対応できる工場が多いです。これにより、管理工数が減り、調整コストも削減されます。
仕入先からの見積もりを比較した時に気づいたのが、国内複数業者への分散発注と、海外ワンストップ対応のコストがほぼ同じだったということです。管理工数は海外の方がずっと少ないのにもかかわらずです。その時に「あ、海外調達ってこういうメリットもあるんだ」と感じました。
変化③:「仕入先廃業=ライン停止」という恐怖から解放される
前述の二点はリスクやコストといった具体的な部分でしたが、最後はもう少し抽象的な、心理面の話になります。しかし、結局は心理的なプレッシャーが多ければ多いほど、他の仕事にも影響してしまうので、大きい変化であると思います。これまでの調達担当者は、常に不安を抱えていました。新聞でサプライヤーの倒産ニュースを見ると、自分たちの仕入先ではないかとドキドキする。顧客からの成約を聞くと、「仕入先が対応できるか」という懸念が浮かぶ。
海外調達で複線化することで、こうした恐怖から解放されるのです。「万が一、国内工場が廃業しても、生産は止まらない」という確信が、経営判断の大前提になります。それはビジネスの継続性だけでなく、従業員の雇用の継続、顧客との約束の達成—こうしたすべての前提を守ることができるわけです。
技術承継問題は、製造業が避けて通れない課題です。しかし、それは同時に「海外調達という新しい選択肢を活かすチャンス」でもあります。
危ない仕入先との関係に悩む調達担当者は、今こそ海外調達の検討を始めるべき時なのです。国内の優良工場を守りながら、同時に海外調達で複線化する—そうした柔軟な調達戦略が、次世代の製造業の強さになるのです。
3.いわいだからこそ可能な海外部品調達
「国内品質×海外調達」を実現!海外協力工場の実力を、映像でご確認ください!
実際にいわいが海外で調達した製品事例をご紹介
続いて、実際に当社がベトナムをはじめとした海外で調達した精密部品の製品事例をご紹介いたします。
空圧機器用六角プラグ

この製品は、品質を担保するために、材料に日本製の真鍮(C3604)を使用することが必須条件でした。そのためご相談前のお客様は、コストが割高になる国内での生産を余儀なくされていました。
そこで当社では、お客様の指定する日本製の材料をベトナムに輸入し、現地で製造するというスキームをご提案。これにより、品質条件を満たしたまま、大幅なコストダウンを実現しました。
クランプブロック

このクランプブロックの調達において、お客様は深刻なサプライチェーンの問題に直面していました。近年、国内では黒染め処理に対応できる加工業者が年々減少しており、「精密なマシニング加工」から「繊細な表面処理」までを一貫して任せられるサプライヤーが、国内では見つからなくなってしまったとのでした。
この将来的なお悩みに対し、当社はベトナムの提携工場での「一貫生産」をご提案いたしました。加工から表面処理までを別々の企業で行う場合、工程間の輸送で傷がつくリスクや、品質管理の分断といった問題が避けられません。しかし当社では、マシニング設備を保有する加工業者と、黒染め処理設備を保有する表面処理業者と、それぞれで最適なパートナー企業を選定いたしました。これにより、当社による一元的な品質管理体制の下で、移動に伴う品質リスクをゼロにし、お客様の厳しい要求をクリアすることが可能となります。
A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

アルミ(A6061)製のマニホールドブロックです。マシニング加工後、アルマイト処理を施して仕上げています。
この製品は、機能面・外観面において、一切の傷が許されないという非常に厳しい品質基準が設けられていました。そのためお客様は、品質が安定し、かつ信頼できる検査体制を持つサプライヤーを求めていらっしゃいました。
この厳格な品質要求に対し、当社はベトナムパートナーが持つ高度な品質保証体制でお応えました。
水処理機械用 カップリング

こちらは、水処理機械に使用されるステンレス(SUS304)製のカップリングです。高精度な四角穴(公差:-0, +0.05)の加工が特徴です。
今回のご相談は、お客様が直面していた、深刻な事業継続の課題から始まりました。まず、長年この部品を供給していた国内の仕入先が廃業してしまい、代替となるサプライヤーが見つからず、やむなくお客様が自社での内製化に踏み切りました。しかし、その頼みの綱であった社内の加工部門も、深刻な人手不足により、担い手がいなくなってしまうという危機的な状況に陥っていました。
お客様が「新たな職人を探して採用するしかない」とまでお考えだった、この「人手不足」という経営課題に対し、当社は海外での一貫生産をご提案いたしました。
超々ジュラルミン製 分配ブロック

こちらは、機械部品として使用されるアルミ(超々ジュラルミン:A7075-T651)製の分配ブロックです。直角度0.01、平行度・平面度0.02、さらにはH7の穴公差など、複数の厳しい幾何公差が求められる、高精度なマシニング加工品でした。
この製品の最大の課題は、A7075-T651という特殊な材質にありました。お客様はこれまで、「この材料は、専門業者でなければ材料入手も加工も不可能だ」とお考えでしたが、そのためアルミダイカスト専門業者にサプライヤーが限定されることで、コストが高止まりしている状況にありました。
この長年の課題に対し、当社はベトナムの提携工場でのワンストップ生産をご提案いたしました。当社の幅広いネットワークを駆使することで、特殊なA7075材の安定調達ルートを確保することも可能です。さらに、高い技術力を持つパートナー企業にて、材料調達から高精度なマシニング加工、黒アルマイト処理、そして精密検査までを一貫して行うことで、大幅なコストダウンを実現いたしました。
お客様からは、「専門業者しか扱えない」という長年の思い込みが覆され、品質を維持したまま、これほど大きなコストダウンが実現できたことに、驚きと喜びの声をいただいております。
組立冶具(エア便 特急対応)

生産ラインで使用されるアルミ(A2017)製の組立治具です。今回は「受注後5日間」という、極めて短い納期でのご依頼でした。
今回のお客様は、急な仕様変更により、組立治具が特急で必要となったとのことでした。しかし、海外調達では船便輸送が基本となるため、このような超短納期での対応は不可能だとお考えでした。
この「特急対応」という非常に高いハードルのご要望に対し、当社はベトナムでの製造と、輸送手段を航空便(エア便)に切り替えるというスキームをご提案いたしました。製造から出荷までを最優先で進め、航空便を活用することで、受注からわずか5日間という、国内調達と変わらないスピードでお客様の元へ製品をお届けすることに成功しました。
丸頭特殊ボルト

機械部品として使用されるSUJ2製の丸頭特殊ボルトです。冷間加工で成形され、真球度S0.03という極めて高い精度が求められます。
このお話は、お客様が長年取引していた国内の冷間加工メーカーが廃業してしまい、この特殊ボルトのサプライチェーンが完全に途絶えてしまったという、深刻なご相談から始まりました。特に、SUJ2という材質の冷間加工と、その後の高周波焼入れまでを一貫して対応できる、高い技術力を持ったサプライヤーであったため、代替先を見つけるのは絶望的な状況でした。
この危機的な状況に対し、当社はベトナムでのワンストップ生産をご提案。当社のネットワークを駆使し、SUJ2材の冷間加工に対応できるだけでなく、現地で高周波焼入れまで一貫して行えるという、お客様の要求を完璧に満たすパートナー企業をベトナムにて選定し、お客様とマッチングして解決いたしました。
丸頭特殊ボルトアッセンブリ

こちらは、特殊ボルト(SCM440他)と複数の部品からなる、丸頭特殊ボルトアッセンブリです。各種サイズを取り揃え、最終の梱包まで含めたOEM供給に対応しています。
このお話は当初、お客様が取引していた国内の部品メーカーが廃業してしまい、構成部品である「特殊ボルト単品」の調達先を探している、というご相談から始まりました。
しかし、当社がお話をお伺いする中で、お客様がその特殊ボルトを調達後、他の部品と組み合わせて社内で組立・梱包作業を行っており、その工数や管理コストが大きな負担となっていることが分かりました。そこで当社は、単にボルト単品を製造するのではなく、関連部品の調達から組立、梱包までをすべて一貫して海外で行う「アセンブリ供給」をご提案いたしました。組立工程の半自動化なども含めた、トータルコストダウンのスキームを設計いたしました。
海外部品調達代行はいわいにお任せください!
長年頼りにしてきた国内サプライヤーの突然の廃業リスクは、もはや従来の対策だけでは防ぎきれません。今こそ、事業を止めないためのBCP戦略としての「海外調達」が注目されています。
いわいは、独自の「日本品質」基準でのサプライヤー選定をはじめ、部品加工から組立・梱包までのワンストップ対応、Zoom検品による確実な品質保証により、初めての海外調達でも安心の体制を構築します。貴社の生産ラインを廃業リスクから守り、「途切れない供給」と「調達担当者様の安心」を実現する海外部品調達代行は、いわいにお任せください。



