グローバルサプライチェーンと聞くと、多くの調達担当者は「大企業に限った話なのでは」と感じるかもしれません。
しかし、実際はそんなことはありません。むしろ、中小メーカーこそが、今、グローバルサプライチェーンの構築を急ぐ必要があるのです。
今回は、グローバルサプライチェーンとは何か、なぜそれが必要なのか、そして、どう進めるのかについてお話ししていきます。

グローバルサプライチェーンとは何か?
グローバルサプライチェーンの基本的な仕組み
まず、グローバルサプライチェーンとは調達先が日本国内に限定されず、世界各地に広がっている供給網のことを指します。たとえば、過去のコラムでも提案してきたように、部品加工をベトナムで行い、組立を国内で行うこと。あるいは、溶接はタイで、機械加工はベトナムで、検査は日本で行うなど、こうした形で複数国に製造機能を分散させる状態のことをいいます。
ただここで重要なのは、単に「複数国で作る」ということではなく、「複数国に分散させることで、リスクを最小化しながら、コストと品質を最適化する」という戦略的な状態を目指すことです。
こちらのコラムでは複数国に跨いだサプライテェーン強靭化とリスク分散について詳しく解説しております。
>>ASEANでのサプライチェーン強靭化の進め方|ベトナム海外調達でBCPリスクを解消する方法
国内サプライチェーンとの根本的な違い
国内サプライチェーンでは、調達先が限定的です。同じ加工ができる工場は少なく、1社依存に陥りやすい。加えて、その工場が廃業したら、代替先を見つけるまでに数ヶ月かかります。このリスクの詳細についてはXXX参照。
一方、グローバルサプライチェーンを選ぶことで、同じ加工ができる工場が複数国に存在します。日本の工場がダメになっても、ベトナムの工場がある。その工場の納期が延びても、別の国の工場がある。こうした形で、供給リスクが物理的に分散されるわけです。
加えて、地政学リスクにも対応しやすくなります。日本がどんな自然災害に見舞われたとしても、ベトナムでの生産は続けられることが見込まれます。逆に、海外で紛争や暴動などのリスクが高まっても、日本での調達があれば生産は続けられる。地理的な分散が、経営の強靭性を高めます。
国内サプライチェーンの課題とBCPについて詳しく解説したコラムはこちらです。
>>技術承継問題を救う!海外部品調達のBCP対策!
>>技術承継問題とは?製造業の調達担当者が知っておきたい供給リスクと海外調達
グローバルサプライチェーンとサプライチェーンマネジメントは何が違うのか?
混同されることが多い概念なのですが、この二つは異なります。
グローバルサプライチェーンは「供給網そのもの」を指します。一方、サプライチェーンマネジメントは「その供給網を管理する方法論」です。つまり、グローバルサプライチェーンを持っていても、それを適切に管理していなければ、機能しません。複数国での調達を「見える化」して、リスクを「定量化」して、問題を「早期に検出」する—こうした管理体制があってこそ、初めてグローバルサプライチェーンが威力を発揮するわけです。なので、グローバルサプライチェーンを確保した上で、その先でそれをきちんとマネタイズするサプライチェーンマネジメントも定着させないといけません。
なぜ今、製造業にグローバルサプライチェーンが求められているのか?
国内サプライヤーの廃業リスクが静かに進行している
日本の製造業は、人口減少と高齢化の波に晒されています。
サプライヤーの経営者の平均年齢は上昇し続けており、後継者がいない工場が急速に増えています。
表面上は「まだ営業してる」ように見えても、実質的にはいつ廃業してもおかしくないという状態にある企業が、全国に点在しているのです。そして、この静かな廃業予備軍は、廃業の予告をしてくれるわけではありません。
ある日突然「経営者が高齢になったので、今年末で廃業します」という連絡が来るのが一般的です。
経営から求められるコスト削減に国内調達だけでは応えられない
同時に、経営からはコスト削減の要求が続きます。
国内の製造業では、賃金の上昇、コストも上昇、工場の老朽化に伴う維持管理費も増加。こうした要因により、調達全体にかかるコストが上昇し続けています。結果として、調達担当者が口を揃えていうのが、国内調達だけでは、経営が求めるコスト削減目標を達成できなくなってきたという課題についてです。しかし、ベトナムなどの海外工場では、低コストを維持しながら、品質も確保できる状況が続いています。つまり、経営目標を達成するには、海外調達への移行が不可欠になっているわけです。そこに、いかに早く気づけるかというのがポイントになってきています。
3. 海外調達に踏み出せない理由はどこにあるのか?
品質と納期への不安が判断を止めている
ここまで読み進めていただく中で、もしかしたら海外調達すべきと既にアンテナは張っているものの、「ベトナムで作ると品質が…」「海外だと納期が…」といった懸念によって、海外調達に踏み出せないという方もいるのではないでしょうか。
確かに、ベトナムの工場全てが高品質を提供するわけではありません。工場によって技術水準にばらつきがあります。ただし、適切な工場を選定し、事前に品質基準を詰めれば、品質は担保できます。納期についても同様です。つまり、「ベトナムは品質が低い」のではなく、「工場選定と事前コミュニケーションが不十分だから、品質トラブルが起きる」というのが現実なのです。
文化・商習慣の違いが現場トラブルを生んでいる
海外調達で失敗する企業の多くが、文化的な違いを理解していません。
以前のコラムでも具体的に説明してきておりますが、日本の製造業では「図面に書いていないことも、職人的な配慮で補う」という暗黙の了解があります。ベトナムでは「図面に書いてあることだけをやる」というアプローチが標準です。この違いを理解していないと、想定と異なる成果物が上がってくるのです。
もちろん、どちらが世界的な「正解」ということはないのですが、各国での慣わしが、その国にとっては「正解」とされているので、それを強制的に日本で定着している方法に変えることはできません。
加えて、材料調達と物流費の落とし穴があります。ベトナムで作った部品を日本に運ぶには、輸送費がかかります。ベトナム国内で調達できない材料は、日本から輸入する必要があり、その輸入費がコストに乗ります。こうした諸経費を入れると、部品単価の安さが相殺されることもあるのです。
中小規模の製造業でもグローバルサプライチェーンを構築できるのか?
結論からいうと、「できます」。
むしろ、中小メーカーの方が、決断が早いぶん、素早くグローバルサプライチェーンを構築できるケースが多いです。大企業のように複雑な稟議システムがなく、経営トップの決断があれば動ける—そうした組織的な機動力が、中小メーカーの強みとなります。
4. グローバルサプライチェーンへの移行はどのように進めるべきか?
移行前に整備すべき社内条件
まず重要なのが、社内での意識統一です。営業、製造、品質保証などの各部門が「なぜグローバルサプライチェーンが必要なのか」を理解し、同じ土俵にいる必要があります。
次に、使っているツールを、他の言語は文化の人が読み取れるように精査する必要があります。例えば、図面の標準化です。これまで日本のやり方に倣って暗黙知だった部分も、明確に文書化し、図面に落とし込む。こうした「見える化」があってこそ、海外工場でも品質を再現できるのです。そして、品質基準に関しても具体的に定義した方が良いです。「良い品質」とは何か、を数値で定義する必要があります。言語も文化もことなるからこそ、曖昧な表現ではなく、徹底的に共通となる数字などで定めた方が最短距離で伝わります。
海外サプライヤーの選定から契約までの実務フロー
まずは、候補工場の探索からはじまります。ネットなどで調べることも大切かもしれませんが、ある程度の下調べを終えた後は、現地に足を運んで、工場を視察する、設備を見る、職人のレベルを見る、会話をする、人を知る、品質管理体制を見る、こういったことを実際に自分の身で確認することが重要です。
その後に、その候補となった場所に試作品の発注をしてみる。複数の工場から試作品をもらい、品質を確認します。成果品だけではなく、それまでの納期対応はどうか、コミュニケーションはスムーズか、こうした実務的な適性を判断した方が良いです。
優良工場を見極めるチェックポイント
工場選定時に確認すべき点として、設備が新しいか、老朽化していないか、品質管理体制が整備されているか、従業員の教育がされているか、経営者の経営理念は何か、信用できる人たちなのか、こうした項目から、工場の実力を総合的に判断します。経営者のマインドや人が信頼できるかどうかなどは、取扱説明書にできる部分ではありませんが、とても重要です。品質を追求したいという姿勢を持つ経営者や従業員なら、問題が起きた時も真摯に対応してくれます。こういった点は、オンラインでの数分の打ち合わせなどではなく、現地で実際に会話を何往復もした上でみえてくる部分となってきます。
NDA・品質保証契約で担保すべき内容
NDA(秘密保持契約)では、設計情報の扱いを明確にします。こちらが提供した図面やノウハウを、他社に流用されるリスクを最小化するのです。品質保証契約では、不良品の返却、検査方法、トラブル発生時の対応といった項目を具体的に定めます。「品質トラブルが起きた時にどうするか」が事前に決まっていることで、問題発生時の対応が素早くなるのです。
グローバルサプライチェーンの構築は、もはや選択肢ではなく、製造業の生存戦略です。今から一歩踏み出すことが、次の時代の競争力を決めるのです。
なぜいわいのベトナム部品調達が選ばれるのか
国内一極依存から脱却するには、複数の供給ルートを持つことが不可欠です。株式会社いわいでは、厳しい審査をクリアしたベトナムの優良工場ネットワークから最適なサプライヤーを選定し、独自の「日本品質」基準で管理することで、国内サプライヤーの廃業リスクに備えながら、品質とコストを両立した供給体制を構築します。
株式会社いわいでは、ベトナムを中心とした海外調達ネットワークを活用し、図面確認から工場選定、試作、品質管理、量産、輸送・通関までを一貫してサポートしています。現地スタッフによるZoomリアルタイム検品や日本語対応での進捗管理により、海外調達で生じがちな認識のズレや手戻りを未然に防ぎます。
「まず何から着手すればよいのか」「自社の部品でもグローバル化は可能なのか」といった段階でも構いません。現在の調達状況やお使いの図面をもとに、最適な移行ステップをご提案いたします。
将来の供給リスクに備え、まずは1品番から、グローバルサプライチェーン構築の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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実際にいわいが海外で調達した製品事例をご紹介
続いて、実際に当社がベトナムをはじめとした海外で調達した精密部品の製品事例をご紹介いたします。
空圧機器用六角プラグ

この製品は、品質を担保するために、材料に日本製の真鍮(C3604)を使用することが必須条件でした。そのためご相談前のお客様は、コストが割高になる国内での生産を余儀なくされていました。
そこで当社では、お客様の指定する日本製の材料をベトナムに輸入し、現地で製造するというスキームをご提案。これにより、品質条件を満たしたまま、大幅なコストダウンを実現しました。
クランプブロック

このクランプブロックの調達において、お客様は深刻なサプライチェーンの問題に直面していました。近年、国内では黒染め処理に対応できる加工業者が年々減少しており、「精密なマシニング加工」から「繊細な表面処理」までを一貫して任せられるサプライヤーが、国内では見つからなくなってしまったとのことでした。
この将来的なお悩みに対し、当社はベトナムの提携工場での「一貫生産」をご提案いたしました。加工から表面処理までを別々の企業で行う場合、工程間の輸送で傷がつくリスクや、品質管理の分断といった問題が避けられません。しかし当社では、マシニング設備を保有する加工業者と、黒染め処理設備を保有する表面処理業者と、それぞれで最適なパートナー企業を選定いたしました。これにより、当社による一元的な品質管理体制の下で、移動に伴う品質リスクをゼロにし、お客様の厳しい要求をクリアすることが可能となります。
A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

アルミ(A6061)製のマニホールドブロックです。マシニング加工後、アルマイト処理を施して仕上げています。
この製品は、機能面・外観面において、一切の傷が許されないという非常に厳しい品質基準が設けられていました。そのためお客様は、品質が安定し、かつ信頼できる検査体制を持つサプライヤーを求めていらっしゃいました。
この厳格な品質要求に対し、当社はベトナムパートナーが持つ高度な品質保証体制でお応えいたしました。
水処理機械用 カップリング

こちらは、水処理機械に使用されるステンレス(SUS304)製のカップリングです。高精度な四角穴(公差:-0, +0.05)の加工が特徴です。
今回のご相談は、お客様が直面していた、深刻な事業継続の課題から始まりました。まず、長年この部品を供給していた国内の仕入先が廃業してしまい、代替となるサプライヤーが見つからず、やむなくお客様が自社での内製化に踏み切りました。しかし、その頼みの綱であった社内の加工部門も、深刻な人手不足により、担い手がいなくなってしまうという危機的な状況に陥っていました。
お客様が「新たな職人を探して採用するしかない」とまでお考えだった、この「人手不足」という経営課題に対し、当社は海外での一貫生産をご提案いたしました。
超々ジュラルミン製 分配ブロック

こちらは、機械部品として使用されるアルミ(超々ジュラルミン:A7075-T651)製の分配ブロックです。直角度0.01、平行度・平面度0.02、さらにはH7の穴公差など、複数の厳しい幾何公差が求められる、高精度なマシニング加工品でした。
この製品の最大の課題は、A7075-T651という特殊な材質にありました。お客様はこれまで、「この材料は、専門業者でなければ材料入手も加工も不可能だ」とお考えでしたが、そのためアルミダイカスト専門業者にサプライヤーが限定されることで、コストが高止まりしている状況にありました。
この長年の課題に対し、当社はベトナムの提携工場でのワンストップ生産をご提案いたしました。当社の幅広いネットワークを駆使することで、特殊なA7075材の安定調達ルートを確保することも可能です。さらに、高い技術力を持つパートナー企業にて、材料調達から高精度なマシニング加工、黒アルマイト処理、そして精密検査までを一貫して行うことで、大幅なコストダウンを実現いたしました。
お客様からは、「専門業者しか扱えない」という長年の思い込みが覆され、品質を維持したまま、これほど大きなコストダウンが実現できたことに、驚きと喜びの声をいただいております。
組立冶具(エア便 特急対応)

生産ラインで使用されるアルミ(A2017)製の組立治具です。今回は「受注後5日間」という、極めて短い納期でのご依頼でした。
今回のお客様は、急な仕様変更により、組立治具が特急で必要となったとのことでした。しかし、海外調達では船便輸送が基本となるため、このような超短納期での対応は不可能だとお考えでした。
この「特急対応」という非常に高いハードルのご要望に対し、当社はベトナムでの製造と、輸送手段を航空便(エア便)に切り替えるというスキームをご提案いたしました。製造から出荷までを最優先で進め、航空便を活用することで、受注からわずか5日間という、国内調達と変わらないスピードでお客様の元へ製品をお届けすることに成功しました。
丸頭特殊ボルト

機械部品として使用されるSUJ2製の丸頭特殊ボルトです。冷間加工で成形され、真球度S0.03という極めて高い精度が求められます。
このお話は、お客様が長年取引していた国内の冷間加工メーカーが廃業してしまい、この特殊ボルトのサプライチェーンが完全に途絶えてしまったという、深刻なご相談から始まりました。特に、SUJ2という材質の冷間加工と、その後の高周波焼入れまでを一貫して対応できる、高い技術力を持ったサプライヤーであったため、代替先を見つけるのは絶望的な状況でした。
この危機的な状況に対し、当社はベトナムでのワンストップ生産をご提案。当社のネットワークを駆使し、SUJ2材の冷間加工に対応できるだけでなく、現地で高周波焼入れまで一貫して行えるという、お客様の要求を完璧に満たすパートナー企業をベトナムにて選定し、お客様とマッチングして解決いたしました。
丸頭特殊ボルトアッセンブリ

こちらは、特殊ボルト(SCM440他)と複数の部品からなる、丸頭特殊ボルトアッセンブリです。各種サイズを取り揃え、最終の梱包まで含めたOEM供給に対応しています。
このお話は当初、お客様が取引していた国内の部品メーカーが廃業してしまい、構成部品である「特殊ボルト単品」の調達先を探している、というご相談から始まりました。
しかし、当社がお話をお伺いする中で、お客様がその特殊ボルトを調達後、他の部品と組み合わせて社内で組立・梱包作業を行っており、その工数や管理コストが大きな負担となっていることが分かりました。そこで当社は、単にボルト単品を製造するのではなく、関連部品の調達から組立、梱包までをすべて一貫して海外で行う「アセンブリ供給」をご提案いたしました。組立工程の半自動化なども含めた、トータルコストダウンのスキームを設計いたしました。
ベトナムでの金属加工品の調達は、株式会社いわいにお任せください!
今回お伝えしたように、ベトナム調達には大きなメリットがある反面、「文化や商習慣の違い」や「複雑な物流・関税によるコスト逆転」など、現場レベルでの複合的なリスクが潜んでいます。こうした海外調達ならではの「現場の壁」は、一般的な対策だけでは防ぎきれません。
いわいでは、厳しい審査をクリアしたベトナム優良工場のネットワークを活かし、独自の「日本品質」基準で最適なサプライヤーを選定しています。さらに、現地スタッフと連携した「Zoomリアルタイム検品」による手戻り防止や、日本語対応スタッフを介したスムーズな進捗管理、そして見落としがちな輸送・通関を含めた複雑な貿易実務のワンストップ代行により、品質・納期・コスト面のリスクを極限まで低減します。
国内工場の廃業リスク(BCP対策)への備えから、メイン拠点としての活用まで。貴社の生産計画を守り、「確実な納品」と「安心の品質」を実現するベトナム部品調達は、株式会社いわいにお任せください。


