精度も安心も、国内品質以上に。
技術継承・品質保証が整った「海外調達」という新しい選択肢を。

部品加工海外調達コラム

COLUMN

海外調達品のリスク管理と成功事例

海外部品調達は、コストやサプライティーン強化などのメリットがあります。一方で品質・納期・契約・輸送など様々なリスクを伴います。本コラムでは、これらの具体的なリスクをどのように管理し、成功に導くのかを解説いたします。実際に高品質かつ安定した海外部品調達を実現した成功事例を交えながら、安心して海外調達を進めるための実用的なノウハウを紹介いたします。

海外部品調達が求められる背景

グローバル競争が激化する中、多くの企業がコスト削減や供給体制の多様化を目的に海外調達に踏み切っています。特にアジア地域を中心に、低コストかつ大量供給が可能な仕入れ先が増えたことで、国内調達だけでは実現できない価格競争力や製品開発の柔軟性が得られるようになりました。

また、近年では単なるコストダウンだけでなく、原材料の安定確保や複数拠点によるリスク分散といった観点からも、海外調達が戦略的に選ばれています。世界的な部品不足やパンデミックによる供給停止を経て、サプライチェーンの強靭化が企業にとって不可欠となっているのです。

このような背景のもと、海外調達は単なる手段ではなく、企業の持続的成長を支える「戦略」としての重要性を増しています。とはいえ、海外調達のリスクには見過ごせない問題も存在しており、それを正確に理解し適切に管理しなければならない点に注意が必要です。

海外調達に潜む主なリスクとその具体的な影響

海外調達には、価格面での優位性がある一方、国内調達には見られない特有のリスクが存在します。海外調達のリスクは企業活動に直接的な影響を及ぼすため、事前に把握し、適切な対策を講じなければなりません。海外調達での主なリスクは以下の5つです。

・品質

・納期

・契約

・輸送

・予測不能な事態

1.品質に関するリスク

国や地域によって製造基準や品質管理の水準に差があります。十分な確認や検査体制を整えていない場合、不良品の混入やスペック違いといった問題が発生しやすくなります。これにより、製品の再加工や納期遅延、最悪の場合は市場回収といった大きな損失につながるおそれがあります。

2.納期の不確実性も重要なリスク

海外との時差や物流事情、通関トラブル、さらには現地の祝祭日や政情不安、自然災害など、様々な要因が納期に影響を及ぼします。こうした遅延は生産スケジュールの乱れや販売機会の損失を招き、サプライチェーン全体の信頼性を低下させかねません。

3.契約や取引慣行に関するリスク

言語や法制度、商習慣の違いにより、契約内容の認識にズレが生じることが少なくありません。曖昧な契約書や不十分な合意のもとでは、トラブル発生時に責任の所在が不明確となり、解決までに時間やコストを要するケースが多く見られます。

4.輸送に関するリスク

長距離かつ複数の輸送手段を伴うため、破損や紛失、天候による遅延を考慮しなければなりません。さらにはストライキや感染症拡大による封鎖といった予測不能な事態も想定する必要があります。こうしたトラブルは、供給の寸断という深刻な影響をもたらすので注意が必要です。

ご紹介した海外調達のリスクは単独で発生することもあれば、複合的に連鎖することもあります。したがって、海外調達に取り組む際には、各リスクの特性と発生源を理解したうえで、予防と対策の両面からアプローチすることが不可欠です。

リスクを最小化するための具体的な管理手法と対策

海外調達に伴うリスクを回避または最小化するには、事前準備と継続的な管理が不可欠です。調達先の選定から契約内容の整備、品質保証体制の構築、そして物流と納期の監視まで、あらゆる局面で対策を講じなければなりません。

リスク管理項目具体的な対策
調達先の選定・実績や監査結果、認証(ISOなど)の確認 ・現地視察による工場や品質体制のチェック
契約の整備・品質基準・納入条件・検査方法・違反時対応を明記 ・翻訳や法的支援の活用 ・インコタームズの明記
品質保証・納入前の立会検査 ・第三者検査 ・定期報告による継続モニタリング
納期の確保・バッファ設定 ・物流可視化による進捗管理 ・複数も仕入先 ・国内在庫の活用
輸送リスク対策・貨物保険加入 ・信頼性ある輸送業者の選定 ・港湾状況や物流情勢の把握 ・代替ルートの確保

1.調達先の選定

まず重要なのは、信頼性の高い調達先の選定です。コストや納期の条件だけで判断してはいけません。過去の取引実績や第三者機関の監査結果、認証の有無(ISOなど)を確認し、安定供給が見込めるかを慎重に見極めることが基本です。現地における工場視察や品質管理体制の確認は、トラブル発生の可能性を大きく減らす有効な手段といえます。

2.契約

契約面では、明確な納入条件・品質基準・検査方法・違反時の対応措置などを盛り込んだ文書を作成し、双方の認識を一致させることが不可欠です。言語の壁を考慮し、必要に応じて専門の翻訳者や法律家を介することで、後のトラブルを未然に防げます。特に国際貿易取引条件の明記は、輸送中の責任を明確にする上で非常に有効です。

3.品質

品質の確保においては、納入前検査の実施が効果的。現地での立会検査や、第三者検査機関を活用することで、不良品の持ち込みを防ぎ、社内工程への影響が最小限にとどまります。また、品質に関する定量的な報告を定期的に求めるなど、継続的なモニタリング体制を敷くことも重要です。

4.納期

納期リスクに対しては、リードタイムに一定のゆとりを設けるほか、出荷から到着までの各工程を可視化する必要があります。進捗状況をリアルタイムで把握できる体制を整えることで、遅延の兆候を早期に検知し、柔軟な対応が可能になります。仕入れ先の複数化や、重要部品における国内在庫の保有といったBCP(事業継続計画)視点の備えも有効です。

5.輸送

輸送リスクへの対応としては、貨物保険への加入を基本とし、輸送業者の選定も慎重に行う必要があります。現地港湾の稼働状況や、国際物流の最新事情を常に把握し、代替ルートを確保しておくようにしましょう。

このように、海外調達におけるリスク管理は、単なる「トラブル対応」ではなく、戦略的に取り組むべき経営課題の1つです。事前の備えと実行力がリスクを乗り越え、安定的な部品調達へと導いてくれます。

海外部品調達の成功事例

ここでは、海外調達のリスクを適切に管理しながら成功させた企業の事例をご紹介します。戦略的な判断と実行力により、安定供給とコスト最適化の両立を実現した実例は、今後海外調達に取り組む企業にとって大いに参考になるでしょう。

ある産業機器メーカーでは、国内調達の価格上昇と納期のばらつきが経営課題となっていました。特に特注品の部品については、国内メーカーの対応力が限られており、量産移行時の調整にも時間を要していたのです。そこで同社は、東南アジアに拠点を置く複数の仕入れ先候補を選定し、現地視察と試作評価を繰り返しながら、信頼できるパートナーの選別を進めました。

仕入れ先の選定後は、製品仕様と品質基準を詳細に文書化したうえで、契約書に明記をいたしました。さらに量産開始前には、立会検査と納入試験を実施し、初期段階での品質安定性を徹底的に確認しました。また、輸送工程の見える化を目的に、現地から出荷された段階で物流ステータスを共有できるシステムを導入しました。これにより、納期遵守の向上に成功しています。

加えて、現地の品質管理責任者と定期的にオンライン会議を実施することで、情報伝達のタイムラグを最小限に抑え、品質異常の未然防止にもつなげています。結果として、同社は海外調達品の割合を拡大し、経営のコスト競争力と供給安定性を両立しました。

このように、海外調達のリスクを正確に見極め、事前準備と継続的な管理を徹底することで、海外調達は高い成果を生み出せます。ただし、成功の裏には仕入れ先との信頼関係と、現地との密接なコミュニケーション体制の構築が欠かせません。

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実際にいわいが海外で調達した製品事例をご紹介

続いて、実際に当社がベトナムをはじめとした海外で調達した精密部品の製品事例をご紹介いたします。

空圧機器用六角プラグ

空圧機器用六角プラグ

この製品は、品質を担保するために、材料に日本製の真鍮(C3604)を使用することが必須条件でした。そのためご相談前のお客様は、コストが割高になる国内での生産を余儀なくされていました。

そこで当社では、お客様の指定する日本製の材料をベトナムに輸入し、現地で製造するというスキームをご提案。これにより、品質条件を満たしたまま、大幅なコストダウンを実現しました。

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クランプブロック

クランプブロック

このクランプブロックの調達において、お客様は深刻なサプライチェーンの問題に直面していました。近年、国内では黒染め処理に対応できる加工業者が年々減少しており、「精密なマシニング加工」から「繊細な表面処理」までを一貫して任せられるサプライヤーが、国内では見つからなくなってしまったとのでした。

この将来的なお悩みに対し、当社はベトナムの提携工場での「一貫生産」をご提案いたしました。加工から表面処理までを別々の企業で行う場合、工程間の輸送で傷がつくリスクや、品質管理の分断といった問題が避けられません。しかし当社では、マシニング設備を保有する加工業者と、黒染め処理設備を保有する表面処理業者と、それぞれで最適なパートナー企業を選定いたしました。これにより、当社による一元的な品質管理体制の下で、移動に伴う品質リスクをゼロにし、お客様の厳しい要求をクリアすることが可能となります。

A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

アルミ(A6061)製のマニホールドブロックです。マシニング加工後、アルマイト処理を施して仕上げています。

この製品は、機能面・外観面において、一切の傷が許されないという非常に厳しい品質基準が設けられていました。そのためお客様は、品質が安定し、かつ信頼できる検査体制を持つサプライヤーを求めていらっしゃいました。

この厳格な品質要求に対し、当社はベトナムパートナーが持つ高度な品質保証体制でお応えました。

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水処理機械用 カップリング

水処理機械用 カップリング

こちらは、水処理機械に使用されるステンレス(SUS304)製のカップリングです。高精度な四角穴(公差:-0, +0.05)の加工が特徴です。

今回のご相談は、お客様が直面していた、深刻な事業継続の課題から始まりました。まず、長年この部品を供給していた国内の仕入先が廃業してしまい、代替となるサプライヤーが見つからず、やむなくお客様が自社での内製化に踏み切りました。しかし、その頼みの綱であった社内の加工部門も、深刻な人手不足により、担い手がいなくなってしまうという危機的な状況に陥っていました。

お客様が「新たな職人を探して採用するしかない」とまでお考えだった、この「人手不足」という経営課題に対し、当社は海外での一貫生産をご提案いたしました。

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超々ジュラルミン製 分配ブロック

超々ジュラルミン製 分配ブロック

こちらは、機械部品として使用されるアルミ(超々ジュラルミン:A7075-T651)製の分配ブロックです。直角度0.01、平行度・平面度0.02、さらにはH7の穴公差など、複数の厳しい幾何公差が求められる、高精度なマシニング加工品でした。

この製品の最大の課題は、A7075-T651という特殊な材質にありました。お客様はこれまで、「この材料は、専門業者でなければ材料入手も加工も不可能だ」とお考えでしたが、そのためアルミダイカスト専門業者にサプライヤーが限定されることで、コストが高止まりしている状況にありました。

この長年の課題に対し、当社はベトナムの提携工場でのワンストップ生産をご提案いたしました。当社の幅広いネットワークを駆使することで、特殊なA7075材の安定調達ルートを確保することも可能です。さらに、高い技術力を持つパートナー企業にて、材料調達から高精度なマシニング加工、黒アルマイト処理、そして精密検査までを一貫して行うことで、大幅なコストダウンを実現いたしました。

お客様からは、「専門業者しか扱えない」という長年の思い込みが覆され、品質を維持したまま、これほど大きなコストダウンが実現できたことに、驚きと喜びの声をいただいております。

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組立冶具(エア便 特急対応)

組立冶具(エア便 特急対応)

生産ラインで使用されるアルミ(A2017)製の組立治具です。今回は「受注後5日間」という、極めて短い納期でのご依頼でした。

今回のお客様は、急な仕様変更により、組立治具が特急で必要となったとのことでした。しかし、海外調達では船便輸送が基本となるため、このような超短納期での対応は不可能だとお考えでした。

この「特急対応」という非常に高いハードルのご要望に対し、当社はベトナムでの製造と、輸送手段を航空便(エア便)に切り替えるというスキームをご提案いたしました。製造から出荷までを最優先で進め、航空便を活用することで、受注からわずか5日間という、国内調達と変わらないスピードでお客様の元へ製品をお届けすることに成功しました。

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丸頭特殊ボルト

丸頭特殊ボルト

機械部品として使用されるSUJ2製の丸頭特殊ボルトです。冷間加工で成形され、真球度S0.03という極めて高い精度が求められます。

このお話は、お客様が長年取引していた国内の冷間加工メーカーが廃業してしまい、この特殊ボルトのサプライチェーンが完全に途絶えてしまったという、深刻なご相談から始まりました。特に、SUJ2という材質の冷間加工と、その後の高周波焼入れまでを一貫して対応できる、高い技術力を持ったサプライヤーであったため、代替先を見つけるのは絶望的な状況でした。

この危機的な状況に対し、当社はベトナムでのワンストップ生産をご提案。当社のネットワークを駆使し、SUJ2材の冷間加工に対応できるだけでなく、現地で高周波焼入れまで一貫して行えるという、お客様の要求を完璧に満たすパートナー企業をベトナムにて選定し、お客様とマッチングして解決いたしました。

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丸頭特殊ボルトアッセンブリ

丸頭特殊ボルトアッセンブリ

こちらは、特殊ボルト(SCM440他)と複数の部品からなる、丸頭特殊ボルトアッセンブリです。各種サイズを取り揃え、最終の梱包まで含めたOEM供給に対応しています。

このお話は当初、お客様が取引していた国内の部品メーカーが廃業してしまい、構成部品である「特殊ボルト単品」の調達先を探している、というご相談から始まりました。

しかし、当社がお話をお伺いする中で、お客様がその特殊ボルトを調達後、他の部品と組み合わせて社内で組立・梱包作業を行っており、その工数や管理コストが大きな負担となっていることが分かりました。そこで当社は、単にボルト単品を製造するのではなく、関連部品の調達から組立、梱包までをすべて一貫して海外で行う「アセンブリ供給」をご提案いたしました。組立工程の半自動化なども含めた、トータルコストダウンのスキームを設計いたしました。

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いわいが提供する「安心」の海外部品調達

日本の製造業は今、これまでにない構造的な転換点を迎えています。少子高齢化による後継者不足、長年蓄積されてきた技術の継承停滞、さらには仕入れ先の廃業や撤退といったリスクが現実のものとなりつつあります。これにより、これまで当たり前とされてきた国内中心の調達体制が揺らぎ始め、調達のあり方そのものを見直す必要性が高まっているのです。こうした環境変化の中、いわいは「これからの時代に本当に信頼できる調達パートナー」として選ばれています。

当社が提案する海外調達の中心は、ものづくりの拠点として近年著しい成長を遂げているベトナムです。しかし、いわいのベトナム調達は単なるコスト削減の手段ではありません。品質・納期・供給体制といった調達全体の信頼性を重視し、安心して利用できる仕組みを構築しています。現地企業との継続的な信頼関係を土台に、契約・財務面の実務にも強みを発揮。さらに、日本の製造現場で求められる品質基準を深く理解したパートナー企業の選定を徹底することで、国内と同等の品質を安定的に提供することが可能となっています。

また、いわいは単なる部品の調達にとどまらず、設計段階から製造までを一貫して支援する体制を整えています。図面のデータ化やペーパーレス化、設計サポートなどの上流工程から、部品製造・調達までをワンストップで対応。国内外のCADオペレーターと連携し、スピーディかつ正確な設計・製造プロセスを実現しています。これにより、お客様の設計意図を確実に反映させた部品を短納期で供給し、開発スピードと品質の両立が可能に。さらに、DXを活用した調達体制により、手間やコストを最小限に抑えながら、高効率かつ高精度な部品調達ができます。

品質保証においても、海外調達特有の不安を払拭する仕組みを整備しています。契約・検品・梱包といった各工程で厳格な管理体制を敷いており、納品後のトラブルを未然に防止。特に検品工程では、Zoomを活用したリアルタイムでの検品対応を導入しており、日本にいながら現地の品質確認が可能です。これは、時間的・地理的制約を超えて安心を提供する、いわいならではの取り組みの1つ。さらに、輸送時の品質リスクにも十分に配慮しており、現地企業による丁寧な梱包体制を通じて、製品の状態を良好なままお届けする体制を構築しています。

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