重要部品を全て同じ工場から調達するのはリスクです。
これを聞いて、ギクっとした調達担当者も少なくはないのではないでしょうか。かつて、調達の観点から見れば、特定のサプライヤーとの関係を深掘りし、単価交渉を有利にすることが「優秀な調達」とされていました。しかし、今、その戦略は通用しなくなっています。
今回は、1社購買リスクとは何か、それが製造現場にもたらす影響、そして、それを回避するための戦略的調達とは何かについて解説していきます。

1社購買リスクとは何か?
1社購買リスクの定義と製造業における位置づけ
1社購買リスクとは、冒頭で述べたような特定の一つのサプライヤーに、重要部品の調達を依存している状態が招く総合的なリスクを指します。
具体的には、供給途絶による生産停止、価格交渉力の喪失、品質・仕様変更への対応遅れ—
こうした複数のリスク要因が組み合わさった状態を言います。つまり、単なる「調達先の廃業リスク」ではなく、それを引き起こす経営的なポジション自体が、経営の脆弱性になっているということなのです。
1社購買リスクが注目される背景
なぜ、今、この問題が注目されるのか。その背景には、二つの環境変化があります。
第一に、このコラムのシリーズでもたびたび出てきた、国内サプライヤーの廃業・高齢化というシビアな現実です。経営者の高齢化、後継者不足、採算悪化—こうした理由で、国内の優良サプライヤーが次々と廃業しています。つまり、1社購買をしていた相手企業が、突然消滅する可能性が急速に高まっているわけです。
熟練技術者の高齢化と廃業リスクについて詳しく解説したコラムはこちら
>>技術承継問題とは?製造業の調達担当者が知っておきたい供給リスクと海外調達
第二に、自然災害や地政学リスクの顕在化です。東日本大震災だけではなく、昨今多発している自然や地政学による不可避な事象が、サプライチェーン全体に与える影響が明らかになってきました。自然災害が特定地域のサプライヤーを一気に停止させ、それが全国の企業の生産ラインを止める—そうした連鎖反応が現実のものになっています。
地政学リスクについて詳しくはこちらのコラムで解説しています。
>>サプライチェーンを襲う地政学リスクとは?製造業が今取り組むべきBCP対策と海外部品調達
1社購買リスクが製造現場に与える影響はどの程度か?
供給途絶が引き起こす3つのダメージ
最も直接的なダメージが供給途絶です。調達先が廃業や災害で供給を停止したら、その瞬間から生産ラインは動かなくなります。代替先の探索には、最低でも3ヶ月から6ヶ月の時間がかかります。その間、納期は遅延し、顧客への約束は果たせず、企業の信用は低下します。そしてこういうことは、突然起きるもので、予知して事前に代替先を探すということも非現実的です。
加えて、代替先を見つけて、そこに仕様書を送って、品質基準をすり合わせて、試作品をもらって、検証して—こうした一連の工程でかかるコストは膨大です。急いで対応すればするほど、コストは加算されていきます。
営業から「この取引先が廃業した」という報告を受けた時、すぐに代替先探索を開始したのですが、その過程で改めて気づきました。「あ、一つの工場に全部依存してるって、こんなに危ないんだ」ということに。同じ加工ができる工場を3社見つけるまでに、数ヶ月かかりましたし、そのあいだはどうしても全ての事がストップしてしまいました。一箇所に依存し集約することは、どんな業界でもリスクとされていますが、製造業に関してはかなり顕著かと思います。
BCPについてはこちらのコラムで詳しく解説しています。
>>技術承継問題を救う!海外部品調達のBCP対策!
気づきにくい「隠れたリスク」とは
供給途絶だけが問題ではありません。むしろ、気づきにくい「隠れたリスク」の方が、長期的には大きなダメージをもたらすこともあります。
たとえば、価格交渉力の低下です。1社購買をしていると、相手先は「うちがダメになったらあなたも困るでしょう」という立場になります。結果として、値上げ要求に応じざるを得ない状況が生まれるのです。数年間で、単価が20から30パーセント上がってしまう—そうした事例は珍しくありません。心理戦というか、どうしても駆け引きが生じてしまいます。
もう一つは、品質や仕様変更への対応の遅れです。相手先が「品質基準を変えたい」「納期を短くしたい」といった一方的な要求を出してきた場合、代替先がないため対応するしかありません。そうしたなかで、品質が低下したり、納期に間に合わなかったりすると、全て自社がその責任を被るわけです。
1社購買リスクを回避するための戦略的調達とはどういうものか?
戦略的調達のアプローチ
戦略的調達とは、単なる「安く買う」ではなく、事業を長く健やかに続けていくためにも「リスクを最小化しながら、コストと品質を最適化する」という思想に基づいた調達方法です。
第一のアプローチが、複数購買(マルチソーシング)です。重要部品については、複数の調達先を確保する。メイン調達先とサブ調達先という形で、調達を分散させるのです。分散の比率はまちまちですが、必ずしも半々というわけではなくメインに重めに偏っても、きちんとサブが機能していれば問題ありません。
ただし、サブ調達先を形だけで持つのではなく、継続的に発注し、工場の技術レベルを維持させることが重要です。そうすることで、いざという時に、その工場がすぐに対応できる体制を整えておくわけです。
第二のアプローチが、海外調達によるサプライヤー分散です。国内だけでなく、ベトナムなどの海外調達先を確保することで、さらにリスクを分散させます。結果として、メインとサブの考え方と似てはいますが、それがさらに国内と国外とベクトルも大きくなり、「国内工場がダメになっても、海外工場がある」「一つの海外工場に依存していても、別の調達先がある」という多層防御が実現するわけです。前述した自然災害や地政学リスクは国内全体に被害があった場合は、メインとサブが両方国内だと結局は共倒れするリスクは残るので、国内外での分散が非常に効率的になってきます。
海外調達を成功させる条件
ただし、海外調達を成功させるには、条件があります。
まずは、工場の選定です。適切な技術レベル、検査体制、納期対応力を持つ工場を選ぶ必要があります。これには、現地調査が不可欠です。そして、綿密なコミュニケーションです。言語の壁、商習慣の違いを乗り越え、品質基準や納期要件を正確に伝える体制が必要です。さらには、段階的な拡大です。最初は20から30パーセント程度の発注から始め、工場の能力を検証しながら、段階的に依存度を高めていく。こうした慎重なアプローチが、失敗を防ぐのです。
実際に1社購買リスク回避に取り組むとどのような変化が起きるか?
導入前の典型的な課題と担当者の声
1社購買をしている企業では、調達担当者が常に不安を抱えています。「この工場が廃業したらどうしよう」「値上げを言い出したら対応できない」、こうした不安が、日常業務の中で常について回ります。さらに、顧客からの新しい要件に対応する際も、「この工場で対応できるか」という制約に縛られます。結果として、営業が提案できる案も限定的になり、新規受注の機会を逃すこともあります。
導入後に変わる調達体制と数値
複数購買や海外調達による分散を進めると、いくつかの変化が起きます。コスト面では、複数購買により単価交渉力が強化されます。相手先が「うちだけ」ではなくなるため、無理な値上げ要求が通らなくなるのです。一方、管理工数は増えますが、長期的には採算が合うケースが多いです。品質面では、複数工場の競争により、品質水準が向上します。各工場が「品質で差別化しよう」と取り組むため、結果として品質が上がるわけです。
そして、一つの工場が廃業しても、別の工場がある。その知識だけで、経営上の安心感が生まれますし、前述した心理戦や駆け引きが不要となってきます。1社購買リスクは、もう見過ごせない経営課題です。複数購買や海外調達による戦略的調達への転換が、次世代の製造業に求められているのです。
こちらのコラムでは海外部品調達のよくあるトラブルについてより詳しく完全ガイドとしてお届けしております。ぜひご覧ください。
≫【完全ガイド】海外部品調達のよくあるトラブル10選とその解決策とは?
なぜいわいのベトナム部品調達が選ばれるのか
1社購買から脱却するうえで最大のハードルとなるのが、「同じ品質で作れるもう一社」をどう見つけるかという点です。株式会社いわいでは、厳しい審査をクリアしたベトナム優良工場のネットワークから、貴社の要求品質に見合ったサプライヤーを選定・マッチングします。国内と海外に調達先を分散させることで、災害時にメイン・サブが共倒れするリスクを回避し、価格交渉力を取り戻す多層防御の調達体制を構築します。
株式会社いわいでは、ベトナムを中心とした海外調達ネットワークを活用し、図面確認から工場選定、試作、品質管理、量産、輸送・通関までを一貫してサポートしています。現地スタッフによる「Zoomリアルタイム検品」や日本語対応での進捗管理により、代替先開拓にかかる膨大な手間と時間を大幅に圧縮します。
「まずはサブ調達先を1社確保しておきたい」「この部品に代替先はあるのか」といった段階でも構いません。現在お使いの図面や調達状況をもとに、最適な分散のかたちをご提案いたします。
供給が止まってからでは、代替先探しに3〜6ヶ月かかります。まずは1品番から、リスク分散の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

「国内品質×海外調達」を実現!海外協力工場の実力を、映像でご確認ください!
実際にいわいが海外で調達した製品事例をご紹介
続いて、実際に当社がベトナムをはじめとした海外で調達した精密部品の製品事例をご紹介いたします。
空圧機器用六角プラグ

この製品は、品質を担保するために、材料に日本製の真鍮(C3604)を使用することが必須条件でした。そのためご相談前のお客様は、コストが割高になる国内での生産を余儀なくされていました。
そこで当社では、お客様の指定する日本製の材料をベトナムに輸入し、現地で製造するというスキームをご提案。これにより、品質条件を満たしたまま、大幅なコストダウンを実現しました。
クランプブロック

このクランプブロックの調達において、お客様は深刻なサプライチェーンの問題に直面していました。近年、国内では黒染め処理に対応できる加工業者が年々減少しており、「精密なマシニング加工」から「繊細な表面処理」までを一貫して任せられるサプライヤーが、国内では見つからなくなってしまったとのことでした。
この将来的なお悩みに対し、当社はベトナムの提携工場での「一貫生産」をご提案いたしました。加工から表面処理までを別々の企業で行う場合、工程間の輸送で傷がつくリスクや、品質管理の分断といった問題が避けられません。しかし当社では、マシニング設備を保有する加工業者と、黒染め処理設備を保有する表面処理業者と、それぞれで最適なパートナー企業を選定いたしました。これにより、当社による一元的な品質管理体制の下で、移動に伴う品質リスクをゼロにし、お客様の厳しい要求をクリアすることが可能となります。
A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

アルミ(A6061)製のマニホールドブロックです。マシニング加工後、アルマイト処理を施して仕上げています。
この製品は、機能面・外観面において、一切の傷が許されないという非常に厳しい品質基準が設けられていました。そのためお客様は、品質が安定し、かつ信頼できる検査体制を持つサプライヤーを求めていらっしゃいました。
この厳格な品質要求に対し、当社はベトナムパートナーが持つ高度な品質保証体制でお応えいたしました。
水処理機械用 カップリング

こちらは、水処理機械に使用されるステンレス(SUS304)製のカップリングです。高精度な四角穴(公差:-0, +0.05)の加工が特徴です。
今回のご相談は、お客様が直面していた、深刻な事業継続の課題から始まりました。まず、長年この部品を供給していた国内の仕入先が廃業してしまい、代替となるサプライヤーが見つからず、やむなくお客様が自社での内製化に踏み切りました。しかし、その頼みの綱であった社内の加工部門も、深刻な人手不足により、担い手がいなくなってしまうという危機的な状況に陥っていました。
お客様が「新たな職人を探して採用するしかない」とまでお考えだった、この「人手不足」という経営課題に対し、当社は海外での一貫生産をご提案いたしました。
超々ジュラルミン製 分配ブロック

こちらは、機械部品として使用されるアルミ(超々ジュラルミン:A7075-T651)製の分配ブロックです。直角度0.01、平行度・平面度0.02、さらにはH7の穴公差など、複数の厳しい幾何公差が求められる、高精度なマシニング加工品でした。
この製品の最大の課題は、A7075-T651という特殊な材質にありました。お客様はこれまで、「この材料は、専門業者でなければ材料入手も加工も不可能だ」とお考えでしたが、そのためアルミダイカスト専門業者にサプライヤーが限定されることで、コストが高止まりしている状況にありました。
この長年の課題に対し、当社はベトナムの提携工場でのワンストップ生産をご提案いたしました。当社の幅広いネットワークを駆使することで、特殊なA7075材の安定調達ルートを確保することも可能です。さらに、高い技術力を持つパートナー企業にて、材料調達から高精度なマシニング加工、黒アルマイト処理、そして精密検査までを一貫して行うことで、大幅なコストダウンを実現いたしました。
お客様からは、「専門業者しか扱えない」という長年の思い込みが覆され、品質を維持したまま、これほど大きなコストダウンが実現できたことに、驚きと喜びの声をいただいております。
組立冶具(エア便 特急対応)

生産ラインで使用されるアルミ(A2017)製の組立治具です。今回は「受注後5日間」という、極めて短い納期でのご依頼でした。
今回のお客様は、急な仕様変更により、組立治具が特急で必要となったとのことでした。しかし、海外調達では船便輸送が基本となるため、このような超短納期での対応は不可能だとお考えでした。
この「特急対応」という非常に高いハードルのご要望に対し、当社はベトナムでの製造と、輸送手段を航空便(エア便)に切り替えるというスキームをご提案いたしました。製造から出荷までを最優先で進め、航空便を活用することで、受注からわずか5日間という、国内調達と変わらないスピードでお客様の元へ製品をお届けすることに成功しました。
丸頭特殊ボルト

機械部品として使用されるSUJ2製の丸頭特殊ボルトです。冷間加工で成形され、真球度S0.03という極めて高い精度が求められます。
このお話は、お客様が長年取引していた国内の冷間加工メーカーが廃業してしまい、この特殊ボルトのサプライチェーンが完全に途絶えてしまったという、深刻なご相談から始まりました。特に、SUJ2という材質の冷間加工と、その後の高周波焼入れまでを一貫して対応できる、高い技術力を持ったサプライヤーであったため、代替先を見つけるのは絶望的な状況でした。
この危機的な状況に対し、当社はベトナムでのワンストップ生産をご提案。当社のネットワークを駆使し、SUJ2材の冷間加工に対応できるだけでなく、現地で高周波焼入れまで一貫して行えるという、お客様の要求を完璧に満たすパートナー企業をベトナムにて選定し、お客様とマッチングして解決いたしました。
丸頭特殊ボルトアッセンブリ

こちらは、特殊ボルト(SCM440他)と複数の部品からなる、丸頭特殊ボルトアッセンブリです。各種サイズを取り揃え、最終の梱包まで含めたOEM供給に対応しています。
このお話は当初、お客様が取引していた国内の部品メーカーが廃業してしまい、構成部品である「特殊ボルト単品」の調達先を探している、というご相談から始まりました。
しかし、当社がお話をお伺いする中で、お客様がその特殊ボルトを調達後、他の部品と組み合わせて社内で組立・梱包作業を行っており、その工数や管理コストが大きな負担となっていることが分かりました。そこで当社は、単にボルト単品を製造するのではなく、関連部品の調達から組立、梱包までをすべて一貫して海外で行う「アセンブリ供給」をご提案いたしました。組立工程の半自動化なども含めた、トータルコストダウンのスキームを設計いたしました。
ベトナムでの金属加工品の調達は、株式会社いわいにお任せください!
今回お伝えしたように、ベトナム調達には大きなメリットがある反面、「文化や商習慣の違い」や「複雑な物流・関税によるコスト逆転」など、現場レベルでの複合的なリスクが潜んでいます。こうした海外調達ならではの「現場の壁」は、一般的な対策だけでは防ぎきれません。
いわいでは、厳しい審査をクリアしたベトナム優良工場のネットワークを活かし、独自の「日本品質」基準で最適なサプライヤーを選定しています。さらに、現地スタッフと連携した「Zoomリアルタイム検品」による手戻り防止や、日本語対応スタッフを介したスムーズな進捗管理、そして見落としがちな輸送・通関を含めた複雑な貿易実務のワンストップ代行により、品質・納期・コスト面のリスクを極限まで低減します。
国内工場の廃業リスク(BCP対策)への備えから、メイン拠点としての活用まで。貴社の生産計画を守り、「確実な納品」と「安心の品質」を実現するベトナム部品調達は、株式会社いわいにお任せください。


