
本記事では、部品調達戦略において、海外と国内、それぞれの選択肢が持つメリットとデメリットを詳細に比較、解説いたします。コスト、品質、納期、リスク、コミュニケーションといった多角的な視点から貴社のビジネスモデルに最適な調達戦略を見つける手助けをします。
BCP(事業継続計画)の観点から見た調達先の多様化
地震や洪水、感染症の拡大、政情不安など、予測不可能な事象がサプライチェーンに深刻な影響を与えるケースが近年増加しています。こうした突発的な供給停止リスクに備えるには調達先を多様化し、特定地域への依存を脱却する必要があります。
特に製造業やインフラ関連企業にとっては、調達の中断は生産遅延や顧客への納期遅れに直結します。そのため、ビジネスの継続性を支える施策として、多拠点からの供給体制の構築を考えなければなりません。そこで、国内調達だけでなく、海外調達も組み合わせた調達戦略を実施することがいずれかの求められています。地域に障害が生じた場合でも、代替ルートを通じて安定供給を維持できます。 BCP(事業継続計画)の観点では、調達網の柔軟性と分散性を持たせることが、企業の継続性を高める鍵です。多拠点調達は、物流停滞や在庫不足といったサプライリスクを軽減するだけでなく、長期的な視点で見た際の競争優位性の確保にもつながります。
国内調達と海外調達の特徴を理解し、最適な選択をすることの重要性
国内 | 海外 | |
コスト | ・単価が高い ・輸送費や関税は抑えられる ・総コストは安定 | ・人件費と製造原価が安い ・単価が低い ・輸送費・関税 ・為替変動の影響を受ける |
納期 | ・輸送距離が短くリードタイムが短い ・納期調整がしやすい | ・輸送期間が長い ・遅延 ・通関トラブルがある |
品質 | ・日本国内の品質基準に対応しやすい ・品質管理・是正対応が迅速 | ・工場や国により品質にバラつきがある ・品質管理体制の構築に手間とコストがかかる |
コミュニケーション | ・意思疎通がスムーズ | ・言語、文化、時差の障壁がある ・誤解や指示ミスのリスクがある |
リスク耐性 | ・政治、自然災害等のリスクは相対的に少ない ・災害発生時に国内全体が影響を受ける | ・多様な外部リスクが存在する ・地域分散が可能 |
柔軟性 | ・小ロット、短納期対応に柔軟 ・急な設計変更やトラブル時の即応性が高い | ・大量調達向き ・変更対応にはリードタイムやコストの制約がある |
部品調達においては、「どこから仕入れるか」という選択が品質やコスト、納期に大きく影響します。最適な調達戦略を選定するためには、コスト・納期・品質・リスク耐性・柔軟性といった複数の観点から比較検討することが不可欠です。
1.コスト
コスト面では、国内調達は製品単価が高くなりがちですが、輸送費や関税が不要なため、総コストの安定性が高くなります。一方、海外調達のメリットは製造原価が安価で価格競争力に優れています。ただし、輸送費や為替変動、関税といった不確定要素による影響が大きくなります。
2.納期
納期の面では、国内調達はリードタイムが短く納期管理の柔軟性に優れていますが、海外調達は輸送や通関に時間を要し、納期遅延のリスクを抱える可能性があります。品質に関しては、国内では日本の品質基準に準拠しやすく、是正対応も迅速に行うことが可能です。海外では生産拠点や国ごとに品質水準に差があり、品質管理体制の構築に一定の時間とコストがかかるケースがあります。
3.コミュニケーション
コミュニケーション面では、国内は言語・文化の壁がなく指示や対応がスムーズに進みます。一方、海外では言語や文化の違い、時差などが障壁となり、認識のズレや情報伝達の遅延が起こることが少なくありません。
4.リスク
リスク耐性という観点では、国内調達は政情不安や感染症などのリスクが比較的少ないことがメリットとなります。しかし、災害が発生した場合、国内全体のサプライチェーンが同時に影響を受ける懸念もあります。対して海外調達は地理的分散が可能で、特定地域のトラブル発生時でも他地域からの供給を維持しやすい特徴があります。
5.柔軟性
柔軟性という点では、国内調達は小ロットや短納期への対応力が高く、急な仕様変更や設計変更にもスピーディに対応可能です。一方で海外調達は大量生産に向いているものの、仕様変更時の調整には時間やコストがかかりやすく、迅速な対応が難しい局面もあります。
これらの特性を十分に理解したうえで、自社の事業戦略や製品の特性、市場のニーズに応じた調達先の選定をしましょう。
国内調達のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
・仕様変更 ・トラブル対応が迅速 ・直接的な品質管理が可能で、ばらつきが抑えられる ・急な需要変動にも柔軟に対応できる ・納期遵守がしやすい | ・調達コストが上昇しやすい ・対応可能なメーカーが限定的な場合がある ・価格競争が激しい製品ではコスト面で不利になる |
国内調達の最大のメリットは、スピードと信頼性にあります。リードタイムが短く、納期の遅延リスクも低減できます。また、同じ言語でのやり取りが可能なため、仕様変更やトラブル対応も円滑に行えるメリットもございます。品質管理においても、直接的なコミュニケーションが取れることで意思疎通が図りやすく、品質のばらつきを抑えることが可能で、国内規格や顧客の要求水準に沿った生産管理がしやすい点も国内調達の魅力です。
さらに、政治的リスクや為替リスクに影響を受けにくいだけでなく、急な需要変動にも柔軟に対応しやすいという利点があります。一方で、国内での人件費や材料費は海外に比べて高く、調達コストが上昇しやすくなる点がデメリットとなります。また、特定の分野においては供給できるメーカーが限られるため、製品の仕様や価格に柔軟性を持たせづらいという課題もあります。
特に価格競争が激しい業界では、国内調達のみでの対応は厳しいでしょう。国内調達はスピードや品質を重視する製品には適していますが、コスト重視の製品開発においては慎重な判断が求められます。
海外部品調達を検討すべき場合は?
海外調達を検討すべきタイミングとしては、以下の4つがあります。
・調達コストの削減が急務
・特殊部品や特定の技術を要する部品の調達
・大量生産をしたい
・調達リスクを分散させたい
たとえば、競争力のある価格で製品を提供する必要がある場合には、コスト優位性を確保できる海外調達が有効です。また、国内では製造が難しい特殊部品や、特定の技術を要する部品の調達にも海外調達が適しています。さらに、大量生産に対応可能な生産キャパシティが必要な場合も、海外の大規模工場を活用することがおすすめです。
加えて、BCPの観点から調達リスクを分散させたいときにも、海外調達を利用するといいでしょう。特定地域に依存せず複数の調達ルートを確保することで、供給の安定性が高まります。製品や部品ごとに調達方法を見直し、コスト・納期・品質・リスクのバランスを踏まえて最適な選択をするようにしましょう。
いわいが提供する海外部品調達による解決策
いわいでは、海外部品調達の経験と実績を活かし、企業の調達課題に対応するための包括的な支援体制を提供しています。特に、ベトナムでの調達ネットワークを活用することで、コストの削減と日本基準の品質確保を両立します。また、現地メーカーとの強固なパートナーシップを通じてマッチングさせるだけでなく、価格交渉や品質管理、納期調整といった調達実務にも対応できます。
いわいでは工場とのマッチングにとどまらず、実務に即した調整をする点も魅力です。また、現地の生産状況や加工精度の特性を踏まえ、製造側との信頼関係を構築することで、調達プロセス全体の安定化を図っています。
いわいの強みは、技術スタッフが部品選定の初期段階から深く関与する点にあります。単なるカタログやサンプルの提供に依存せず、図面や仕様書の精査を通じて、要求される性能や寸法公差を正確に満たすかどうかを見極めます。こうした目利き力に基づく判断により、適合する仕入先を迅速に選定し、製品の信頼性を確保いたします。必要に応じて製品設計段階からの見直しや部品の共通化を提案することで、調達の効率性を高め、全体コストの最適化を実現します。
このように、いわいの海外調達支援は、単なるコストダウンを超え、企業の設計・製造・購買部門が直面する課題を多面的にサポートする実務的かつ戦略的な取り組みです。特に、国内外の調達リソースをどう組み合わせるかに悩む製造業にとっては、調達機能そのものの再構築を後押しする有力な選択肢となります。
実際にいわいが海外で調達した製品事例をご紹介
続いて、実際に当社がベトナムをはじめとした海外で調達した精密部品の製品事例をご紹介いたします。
空圧機器用六角プラグ

この製品は、品質を担保するために、材料に日本製の真鍮(C3604)を使用することが必須条件でした。そのためご相談前のお客様は、コストが割高になる国内での生産を余儀なくされていました。
そこで当社では、お客様の指定する日本製の材料をベトナムに輸入し、現地で製造するというスキームをご提案。これにより、品質条件を満たしたまま、大幅なコストダウンを実現しました。
クランプブロック

このクランプブロックの調達において、お客様は深刻なサプライチェーンの問題に直面していました。近年、国内では黒染め処理に対応できる加工業者が年々減少しており、「精密なマシニング加工」から「繊細な表面処理」までを一貫して任せられるサプライヤーが、国内では見つからなくなってしまったとのでした。
この将来的なお悩みに対し、当社はベトナムの提携工場での「一貫生産」をご提案いたしました。加工から表面処理までを別々の企業で行う場合、工程間の輸送で傷がつくリスクや、品質管理の分断といった問題が避けられません。しかし当社では、マシニング設備を保有する加工業者と、黒染め処理設備を保有する表面処理業者と、それぞれで最適なパートナー企業を選定いたしました。これにより、当社による一元的な品質管理体制の下で、移動に伴う品質リスクをゼロにし、お客様の厳しい要求をクリアすることが可能となります。
A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

アルミ(A6061)製のマニホールドブロックです。マシニング加工後、アルマイト処理を施して仕上げています。
この製品は、機能面・外観面において、一切の傷が許されないという非常に厳しい品質基準が設けられていました。そのためお客様は、品質が安定し、かつ信頼できる検査体制を持つサプライヤーを求めていらっしゃいました。
この厳格な品質要求に対し、当社はベトナムパートナーが持つ高度な品質保証体制でお応えました。
水処理機械用 カップリング

こちらは、水処理機械に使用されるステンレス(SUS304)製のカップリングです。高精度な四角穴(公差:-0, +0.05)の加工が特徴です。
今回のご相談は、お客様が直面していた、深刻な事業継続の課題から始まりました。まず、長年この部品を供給していた国内の仕入先が廃業してしまい、代替となるサプライヤーが見つからず、やむなくお客様が自社での内製化に踏み切りました。しかし、その頼みの綱であった社内の加工部門も、深刻な人手不足により、担い手がいなくなってしまうという危機的な状況に陥っていました。
お客様が「新たな職人を探して採用するしかない」とまでお考えだった、この「人手不足」という経営課題に対し、当社は海外での一貫生産をご提案いたしました。
超々ジュラルミン製 分配ブロック

こちらは、機械部品として使用されるアルミ(超々ジュラルミン:A7075-T651)製の分配ブロックです。直角度0.01、平行度・平面度0.02、さらにはH7の穴公差など、複数の厳しい幾何公差が求められる、高精度なマシニング加工品でした。
この製品の最大の課題は、A7075-T651という特殊な材質にありました。お客様はこれまで、「この材料は、専門業者でなければ材料入手も加工も不可能だ」とお考えでしたが、そのためアルミダイカスト専門業者にサプライヤーが限定されることで、コストが高止まりしている状況にありました。
この長年の課題に対し、当社はベトナムの提携工場でのワンストップ生産をご提案いたしました。当社の幅広いネットワークを駆使することで、特殊なA7075材の安定調達ルートを確保することも可能です。さらに、高い技術力を持つパートナー企業にて、材料調達から高精度なマシニング加工、黒アルマイト処理、そして精密検査までを一貫して行うことで、大幅なコストダウンを実現いたしました。
お客様からは、「専門業者しか扱えない」という長年の思い込みが覆され、品質を維持したまま、これほど大きなコストダウンが実現できたことに、驚きと喜びの声をいただいております。
組立冶具(エア便 特急対応)

生産ラインで使用されるアルミ(A2017)製の組立治具です。今回は「受注後5日間」という、極めて短い納期でのご依頼でした。
今回のお客様は、急な仕様変更により、組立治具が特急で必要となったとのことでした。しかし、海外調達では船便輸送が基本となるため、このような超短納期での対応は不可能だとお考えでした。
この「特急対応」という非常に高いハードルのご要望に対し、当社はベトナムでの製造と、輸送手段を航空便(エア便)に切り替えるというスキームをご提案いたしました。製造から出荷までを最優先で進め、航空便を活用することで、受注からわずか5日間という、国内調達と変わらないスピードでお客様の元へ製品をお届けすることに成功しました。
丸頭特殊ボルト

機械部品として使用されるSUJ2製の丸頭特殊ボルトです。冷間加工で成形され、真球度S0.03という極めて高い精度が求められます。
このお話は、お客様が長年取引していた国内の冷間加工メーカーが廃業してしまい、この特殊ボルトのサプライチェーンが完全に途絶えてしまったという、深刻なご相談から始まりました。特に、SUJ2という材質の冷間加工と、その後の高周波焼入れまでを一貫して対応できる、高い技術力を持ったサプライヤーであったため、代替先を見つけるのは絶望的な状況でした。
この危機的な状況に対し、当社はベトナムでのワンストップ生産をご提案。当社のネットワークを駆使し、SUJ2材の冷間加工に対応できるだけでなく、現地で高周波焼入れまで一貫して行えるという、お客様の要求を完璧に満たすパートナー企業をベトナムにて選定し、お客様とマッチングして解決いたしました。
丸頭特殊ボルトアッセンブリ

こちらは、特殊ボルト(SCM440他)と複数の部品からなる、丸頭特殊ボルトアッセンブリです。各種サイズを取り揃え、最終の梱包まで含めたOEM供給に対応しています。
このお話は当初、お客様が取引していた国内の部品メーカーが廃業してしまい、構成部品である「特殊ボルト単品」の調達先を探している、というご相談から始まりました。
しかし、当社がお話をお伺いする中で、お客様がその特殊ボルトを調達後、他の部品と組み合わせて社内で組立・梱包作業を行っており、その工数や管理コストが大きな負担となっていることが分かりました。そこで当社は、単にボルト単品を製造するのではなく、関連部品の調達から組立、梱包までをすべて一貫して海外で行う「アセンブリ供給」をご提案いたしました。組立工程の半自動化なども含めた、トータルコストダウンのスキームを設計いたしました。
海外部品調達代行はいわいにお任せください!
人手不足や国内サプライヤー廃業など、日本の製造業は調達の課題に直面しています。
いわいは、こうした課題を解決し、コスト削減、安定供給、品質確保、BCP対策を実現する海外部品調達代行のプロです。独自の国内外ネットワークを活かし、言語・品質不安・実務の障壁を解消。「国内と変わらぬ安心」で高品質部品を海外から調達し、貴社のサプライチェーン強化と事業成長を支えます。ぜひご相談ください。