海外部品調達において、品質や納期と同じくらい、もしくはそれ以上に重要なのが「契約リスクの管理」です。なぜなら、国内取引と異なり、海外取引では法律、商習慣、言語が異なるため、そこからくるトラブルが致命的な損失につながるからです。
品質保証の範囲が曖昧なまま取引を進めた結果、不良品が大量発生しても賠償請求できない。納期遅延で生産ラインが停止したのに、契約書に損害賠償条項がないため補償を受けられない。技術図面を渡したら、知らない間に第三者に流出していた…。こうした事態は、すべて「契約リスク管理の不備」から発生します。
本コラムでは、機械・装置メーカーの購買担当者向けに、海外部品調達で特に注意すべき契約リスクと、それを回避するための具体的な対策を解説します。また、株式会社いわいが提供する、複雑な契約実務の課題を解消し、安心して海外調達を進めるための独自の契約リスク管理とサポート体制についてもご紹介します。
なぜ海外部品調達では「契約リスク」の管理が重要なのか
国内取引との根本的な違い:法律、商習慣、言語の壁
皆さまも通常業務でご体感いただいてるかと思いますが、国内取引では、日本の商法や民法が適用され、商習慣も共有されているため、多くの事項は「共通認識」として扱われます。口頭での合意や簡易な発注書だけでも、ある程度の信頼関係のもとで取引が成立することも少なくありません。しかし、海外取引ではそうはいきません。
まずは、法律が異なります。日本の法律は適用されず、相手国の法律、または契約で合意した準拠法が適用されます。もしくは、日本の法律を理解してもらう必要もあります。日本では(契約書に明記するにせよ)当然とされる「瑕疵担保責任」や「債務不履行による損害賠償」の概念も、国によってはお互いに事前にコンセンサスを得た上で明示的に契約書に記載しなければ認められないケースも多いです。
また、商習慣が異なります。日本では「納期厳守」「品質第一」が当たり前ですが、国や地域によっては納期に対する認識が緩く、「少しくらい遅れても問題ない」と考える文化もあります。品質基準についても、日本のクオリティはどの業界においても世界的に評価されるくらいにはある意味特殊であり、「多少の不良は許容範囲」とする国も存在します。
言語の壁もつきものになってきます。契約書は通常英語で作成されますが、微妙なニュアンスの違いが後々のトラブルにつながることがあります。例えば、以前私の知り合いが頭を悩ませていた[1] 些細な違いでいうと、「reasonable efforts」と「best efforts」の違いなど、英語の契約用語には法的な意味の違いがあり、正確に理解しなければなりません。皆さんはこの2つの違いをご存知でしょうか?前者は「合理的な努力」、後者は「最善の努力」で求められるものが変わってきます。
契約トラブルが招く具体的なリスク
契約リスクの管理を怠ると、以下のような具体的な問題が発生します。
品質保証の不在: 品質保証の範囲や期間が契約書に明記されていない場合、不良品が発覚しても交換や返金を求めることが困難です。相手方が「契約書に書いていない」と主張すれば、それまでです。
損害賠償請求の困難さ: 納期遅延や品質不良によって生産ラインが停止し、多大な損失が発生しても、契約書に損害賠償条項がなければ、補償を受けることはほぼ不可能です。海外の裁判所で訴訟を起こすことも現実的ではありません。
知的財産権侵害: 技術図面や仕様書を相手方に渡した結果、知的財産権が侵害されるリスクがあります。契約書に秘密保持条項や知的財産権の帰属を明記していなければ、図面が第三者に流出しても法的に対抗できません。
しかし、これらのリスクは、契約書の内容次第で回避可能です。
海外調達で直面する主な契約リスクとその対策
リスク1:品質保証と責任範囲の曖昧さ
品質基準、検査方法、不良品の定義、品質保証期間、不良発生時の対応(交換・返金・修理)などが契約書に明記されていない場合、不良品が発生しても責任の所在が不明確になります。
対策として、まずは品質基準の明確化があげられます。 図面、仕様書、サンプルを契約書に添付し、「この仕様を満たすこと」を明記します。そして、検査方法の合意をとること。出荷前検査の実施、検査基準、合格基準を契約書に記載します。品質保証条項についても細かく記載しましょう。品質保証期間、不良発生時の対応(無償交換、返金、修理費用負担)などが含まれます。そして、第三者検査の活用も重要になってきます。第三者検査機関による検査を契約条件に含めます。
先日、当社の担当者が協力工場とやりとりをした際、現地の品質管理体制について事細かにクリアにした結果、契約書で品質基準を具体的に定義し、出荷前に必ず検査を実施することを徹底するよう契約書で合意していました。
リスク2:納期遅延・供給停止時の損害賠償
納期遅延や供給停止が発生した場合、契約書に損害賠償条項がなければ、損失を補償してもらえません。
損害賠償条項の設定は詳細に設定する必要があります。たとえば、納期遅延1日あたり◯◯円(または契約金額の◯%)の損害賠償金を支払う旨を明記します。ただし、上限額(例:契約金額の10%まで)も設定し、相手方の負担が過大にならないようバランスを取ります(あまりにも負担が過大だと、今度は先方との「人間関係」にも響いてきてしまいます)。あわせて、納期の明確化もします。「〇月〇日までに納品」だけでなく、「本船渡し条件の場合、〇月〇日までに船積み完了」など、具体的な条件を記載します。不可抗力条項といわれる、天災、戦争、パンデミックなど、当事者の責任によらない事由で履行不能になった場合の免責条項も設けましょう。ただし、適用範囲を限定し、安易に免責されないようにします。
リスク3:知的財産権(IP)の保護
技術図面、仕様書、ノウハウを相手方に開示した結果、知的財産権が侵害されるリスクがあります。契約書に秘密保持条項がなければ、図面が第三者に流出しても法的に対抗できません。
まずは、秘密保持契約の締結をしっかりしましょう。 取引開始前に、必ず秘密保持契約を締結します。開示情報の範囲、秘密保持期間、違反時の損害賠償を明記します。知的財産権の帰属も確認できてますでしょうか。製造過程で発生した改良技術や派生物の知的財産権が誰に帰属するかを契約書で明確にします。第三者への開示禁止: 相手方が第三者(下請け業者など)に情報を開示する場合は、事前承認を必要とする条項を設けます。
当社では、秘密保持契約を締結した海外工場とのみ取引を行っており、100%の締結率を[3] 維持しています。これにより、お客様の技術情報を確実に保護しています。
リスク4:準拠法と紛争解決の選択
契約書に準拠法や紛争解決手段が明記されていない場合、トラブル発生時にどの国の法律で、どこで解決するのかで揉め、紛争が長期化します。
準拠法の選択をまず丁寧に決めましょう。もちろん、日本法を準拠法とすることが理想ですが、相手方が合意しない場合、英国法やシンガポール法など、中立的で予測可能性の高い法律を選択します。相手国の法律を準拠法にすると、不利な条項が適用されるリスクがあります。紛争解決手段についてですが、訴訟ではなく、仲裁(Arbitration)を選択することが一般的です。仲裁は訴訟よりも迅速で、仲裁判断は国際的に執行可能です(ニューヨーク条約)。仲裁機関としては、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)や国際商業会議所(ICC)が信頼性が高いです。
契約リスクを最小化するための具体的な管理手法
契約リスクを最小化するためには、以下の管理手法が有効です。
契約書のテンプレート化: 毎回ゼロから契約書を作成するのではなく、過去の実績をもとにテンプレート化します。ここまでで伝えてきたような必須条項を漏れなく盛り込んだテンプレートを用意しておけば、交渉時間を短縮しつつ、リスクを最小化できます。
法務部門・外部専門家の活用: 契約書の内容は、必ず法務部門または外部の法律専門家(弁護士)にレビューしてもらいます。英文契約書の場合、微妙な表現の違いが法的な意味に大きく影響するため、専門家の確認が不可欠です。
段階的な取引開始: 初回取引は小ロットから始め、相手方の対応や品質を確認した上で、徐々に取引量を増やします。いきなり大量発注すると、トラブル時のダメージが大きくなります。
定期的な契約内容の見直し: 長期取引の場合、定期的に契約内容を見直し、市況変化や法改正に対応します。
商社だからこそ可能な、いわいの契約リスク管理体制
冒頭でも述べたとおり、海外部品調達において、契約リスクの管理は品質や納期とあわせて同じくらい重要です。法律、商習慣、言語が異なる海外取引では、「契約書に書いていないことは実現しない」と考えるべきです。品質保証、損害賠償、知的財産権の保護、準拠法と紛争解決手段—これらを契約書で明確にすることで、リスクを最小化し、安心して海外調達を進めることができます。
株式会社いわいでは、海外部品調達における契約リスクを最小化するため、独自の管理体制を構築しています。100%の秘密保持契約の締結、標準契約書テンプレートの活用、現地法人との直接交渉など、独自の契約リスク管理体制を構築し、お客様の海外調達をサポートしています。
海外部品調達における契約リスクにお悩みの方、または安心して海外調達を進めたい方は、ぜひ株式会社いわいにご相談ください。
実際にいわいが海外で調達した製品事例をご紹介
続いて、実際に当社がベトナムをはじめとした海外で調達した精密部品の製品事例をご紹介いたします。
空圧機器用六角プラグ

この製品は、品質を担保するために、材料に日本製の真鍮(C3604)を使用することが必須条件でした。そのためご相談前のお客様は、コストが割高になる国内での生産を余儀なくされていました。
そこで当社では、お客様の指定する日本製の材料をベトナムに輸入し、現地で製造するというスキームをご提案。これにより、品質条件を満たしたまま、大幅なコストダウンを実現しました。
クランプブロック

このクランプブロックの調達において、お客様は深刻なサプライチェーンの問題に直面していました。近年、国内では黒染め処理に対応できる加工業者が年々減少しており、「精密なマシニング加工」から「繊細な表面処理」までを一貫して任せられるサプライヤーが、国内では見つからなくなってしまったとのでした。
この将来的なお悩みに対し、当社はベトナムの提携工場での「一貫生産」をご提案いたしました。加工から表面処理までを別々の企業で行う場合、工程間の輸送で傷がつくリスクや、品質管理の分断といった問題が避けられません。しかし当社では、マシニング設備を保有する加工業者と、黒染め処理設備を保有する表面処理業者と、それぞれで最適なパートナー企業を選定いたしました。これにより、当社による一元的な品質管理体制の下で、移動に伴う品質リスクをゼロにし、お客様の厳しい要求をクリアすることが可能となります。
A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

アルミ(A6061)製のマニホールドブロックです。マシニング加工後、アルマイト処理を施して仕上げています。
この製品は、機能面・外観面において、一切の傷が許されないという非常に厳しい品質基準が設けられていました。そのためお客様は、品質が安定し、かつ信頼できる検査体制を持つサプライヤーを求めていらっしゃいました。
この厳格な品質要求に対し、当社はベトナムパートナーが持つ高度な品質保証体制でお応えました。
水処理機械用 カップリング

こちらは、水処理機械に使用されるステンレス(SUS304)製のカップリングです。高精度な四角穴(公差:-0, +0.05)の加工が特徴です。
今回のご相談は、お客様が直面していた、深刻な事業継続の課題から始まりました。まず、長年この部品を供給していた国内の仕入先が廃業してしまい、代替となるサプライヤーが見つからず、やむなくお客様が自社での内製化に踏み切りました。しかし、その頼みの綱であった社内の加工部門も、深刻な人手不足により、担い手がいなくなってしまうという危機的な状況に陥っていました。
お客様が「新たな職人を探して採用するしかない」とまでお考えだった、この「人手不足」という経営課題に対し、当社は海外での一貫生産をご提案いたしました。
超々ジュラルミン製 分配ブロック

こちらは、機械部品として使用されるアルミ(超々ジュラルミン:A7075-T651)製の分配ブロックです。直角度0.01、平行度・平面度0.02、さらにはH7の穴公差など、複数の厳しい幾何公差が求められる、高精度なマシニング加工品でした。
この製品の最大の課題は、A7075-T651という特殊な材質にありました。お客様はこれまで、「この材料は、専門業者でなければ材料入手も加工も不可能だ」とお考えでしたが、そのためアルミダイカスト専門業者にサプライヤーが限定されることで、コストが高止まりしている状況にありました。
この長年の課題に対し、当社はベトナムの提携工場でのワンストップ生産をご提案いたしました。当社の幅広いネットワークを駆使することで、特殊なA7075材の安定調達ルートを確保することも可能です。さらに、高い技術力を持つパートナー企業にて、材料調達から高精度なマシニング加工、黒アルマイト処理、そして精密検査までを一貫して行うことで、大幅なコストダウンを実現いたしました。
お客様からは、「専門業者しか扱えない」という長年の思い込みが覆され、品質を維持したまま、これほど大きなコストダウンが実現できたことに、驚きと喜びの声をいただいております。
組立冶具(エア便 特急対応)

生産ラインで使用されるアルミ(A2017)製の組立治具です。今回は「受注後5日間」という、極めて短い納期でのご依頼でした。
今回のお客様は、急な仕様変更により、組立治具が特急で必要となったとのことでした。しかし、海外調達では船便輸送が基本となるため、このような超短納期での対応は不可能だとお考えでした。
この「特急対応」という非常に高いハードルのご要望に対し、当社はベトナムでの製造と、輸送手段を航空便(エア便)に切り替えるというスキームをご提案いたしました。製造から出荷までを最優先で進め、航空便を活用することで、受注からわずか5日間という、国内調達と変わらないスピードでお客様の元へ製品をお届けすることに成功しました。
丸頭特殊ボルト

機械部品として使用されるSUJ2製の丸頭特殊ボルトです。冷間加工で成形され、真球度S0.03という極めて高い精度が求められます。
このお話は、お客様が長年取引していた国内の冷間加工メーカーが廃業してしまい、この特殊ボルトのサプライチェーンが完全に途絶えてしまったという、深刻なご相談から始まりました。特に、SUJ2という材質の冷間加工と、その後の高周波焼入れまでを一貫して対応できる、高い技術力を持ったサプライヤーであったため、代替先を見つけるのは絶望的な状況でした。
この危機的な状況に対し、当社はベトナムでのワンストップ生産をご提案。当社のネットワークを駆使し、SUJ2材の冷間加工に対応できるだけでなく、現地で高周波焼入れまで一貫して行えるという、お客様の要求を完璧に満たすパートナー企業をベトナムにて選定し、お客様とマッチングして解決いたしました。
丸頭特殊ボルトアッセンブリ

こちらは、特殊ボルト(SCM440他)と複数の部品からなる、丸頭特殊ボルトアッセンブリです。各種サイズを取り揃え、最終の梱包まで含めたOEM供給に対応しています。
このお話は当初、お客様が取引していた国内の部品メーカーが廃業してしまい、構成部品である「特殊ボルト単品」の調達先を探している、というご相談から始まりました。
しかし、当社がお話をお伺いする中で、お客様がその特殊ボルトを調達後、他の部品と組み合わせて社内で組立・梱包作業を行っており、その工数や管理コストが大きな負担となっていることが分かりました。そこで当社は、単にボルト単品を製造するのではなく、関連部品の調達から組立、梱包までをすべて一貫して海外で行う「アセンブリ供給」をご提案いたしました。組立工程の半自動化なども含めた、トータルコストダウンのスキームを設計いたしました。
海外部品調達代行はいわいにお任せください!
海外調達の納期遅延は、サプライヤー、物流、品質、実務など複合的な原因で発生します。これらのリスクは、一般的な対策だけでは防ぎきれません。
いわいは、独自の「日本品質」基準でのサプライヤー選定、リアルタイム進捗管理、Zoom検品による手戻り防止、そして複雑な貿易実務のワンストップ代行により、納期遅延リスクを極限まで低減。貴社の生産計画を守り、「確実な納品」と「安心」を実現する海外部品調達代行は、いわいにお任せください。