「ベトナム調達なら、日本の半分のコストで済みますよ」と、言われて海外調達に踏み切ったものの、届いた部品の品質に愕然とした経験はないでしょうか。寸法が図面通りでない、表面仕上げが粗い、ロット間でバラツキが大きい。こうした品質トラブルは、単なる「技術力の差」ではなく、その多くが「5S活動の定着度」に起因しています。
私は株式会社いわいに入社して間もない新入社員ですが、ベトナムの提携工場を訪問して驚いたのは、先入観の正反対の現実でした。発展途上国だからあまり綺麗じゃないんだろうなと思っていたら、視察した企業は皆、日本の町工場と同等レベルで5Sが行き届いていたのです。作業台の上は整理整頓されていて、工具も一つ一つ決まった場所に置かれている。こういう光景を見ると「ここは本気で品質管理に取り組んでるんだ」と感じられます。今回のコラムでは、ベトナム製造業における5S活動の現状と、品質トラブルを未然に防ぐための工場選定の勘所を、現場での体感をもとに解説します。

ベトナム製造業における5S活動の現状
まず、そもそも5S活動とは、製造現場の基盤となる管理手法で、「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「躾(Shitsuke)」の5つの頭文字を取ったものです。日本の製造業では当たり前のように実践されています。そのため、私たちからすると、ベトナムをはじめとした発展途上国のイメージは日本の徹底度とはかなりの差があると思いがちです。しかし、実際に現場を訪れると固定概念のイメージとは随分異なり、実際は5Sが徹底されています。
具体的にみてみると、ベトナムの中でも日本基準を徹底する工場は、工具や測定器が定位置管理され、使用後は必ず元の場所に戻されています。床に油染みやゴミが一切なく、通路と作業エリアが明確に区分されていたり、不良品や仕掛品が適切に管理され、混入リスクがゼロに近いです。そして、作業手順書が現場に掲示され、作業者全員が内容を理解している様子が顕著です。
一方で、5S活動が形骸化している工場では、工具が作業台の上に無造作に置かれ、どこに何があるか作業者も把握していない時があります。また、床に切削屑や廃材が散乱し、清掃が「週に一度の大掃除」程度であったり、不良品と良品が同じ棚に混在し、区別が不明瞭なこともあります。
一方、日本国内でも、特に古い町工場では、5S活動が形骸化していることが珍しくありません。長年の勘で「この工具はここ、あの工具はそこ」という属人的な仕事の進め方が常態化しているのです。作業者本人は「何がどこにあるか把握してる」と思っているのですが、それは完全に個人の頭の中だけの情報であり、ルール化されていません。結果として、その職人が引退すると、その情報は次の世代に全く引き継がれない。5Sのルールが確立されていないから、後任者は整理整頓の基準そのものを失ってしまうわけです。これが、国内サプライヤーの事業承継問題を深刻化させている一因なのです。
ベトナム調達で品質トラブルが絶えない根本原因
品質トラブルの多くは、「取引前の工場選定」の段階で既に決まっています。冒頭でも述べたように、コストだけを重視し、5S活動が形骸化している工場と取引を始めてしまうと、その後どれだけ品質改善を要求しても、根本的な解決には至りません。
5Sが形骸化している工場では、日常的に様々な問題が多発しています。
工程間の分断に関してですと、 前工程で発生した不良が後工程に流れ込み、最終検査で初めて発見される。これは、工程間での情報共有や中間検査の仕組みが機能していないことを意味します。私が訪問したある工場では、切削加工後の部品が次の研磨工程に運ばれる際、バリ取りの有無すら確認されずに流れていました。結果、研磨工程で不良が大量に発見され、手戻りが発生していました。
さらに5S活動が徹底されていない工場では、検査基準が曖昧で、作業者ごとに判断がバラバラです。ある作業者は「これくらいなら問題ない」と判断し、別の作業者は同じ状態を不良と判断する。こうした基準の不統一は、ロット間の品質バラツキに直結します。ひとつひとつに致命的な問題が見れなくても、まとめた時に使いものにならないこともあります。これは海外であれば、許容範囲だとしても、日本の基準では通りません。
工具や測定器が定位置管理されていない工場では、測定器の校正も適切に行われていないケースが多々あります。私が現場で目にしたのは、ノギスが作業台の隅に放置され、校正シールが何年も前のままになっている光景でした!これでは、正確な寸法測定など期待できません。
こうして、列挙すると、それらさえ回避できればうまくいくのでは、という気はしてきますが、実際にベトナム調達で品質トラブルを嘆く企業は絶えません。
トラブルに巻き込まれている企業の話を聞いてみると、一番多いのは、価格最優先で工場を選定し、 「とにかく安ければいい」という姿勢で工場を選び、5S活動の実態を確認しないまま取引を開始してしまうケースが結構あるように思います。結果、初回ロットから不良率が高く、追加の検査コストや手戻りで当初の想定コストを大幅に超過しています。
次に多いのは、書類上の5S活動を鵜呑みにする 工場から提出された「5S活動実施報告書」や「品質管理体制書」を見て安心し、実際の現場確認を怠る。書類と現場の乖離に気づかず、量産開始後に品質問題が噴出。先ほどもお伝えしたとおり、公言していたり、ポスターがあってもそれが真実かどうかは別問題なんです…。
上記のような大きなトラブルに発展する前に小さなエラーを見つけれたとしても、短期的な改善指示で終わり、不良が発生するたびに「もっとちゃんとやって」と指示するだけで、根本的な5S活動の定着支援を行わないことがよくあるので、結果的に同じような品質トラブルが繰り返されてしまいます。つまり、指示の仕方にも工夫が必要になります。
いわい独自の提携工場選定基準とは?
株式会社いわいでは、ベトナムの提携工場を選定する際、独自の格付け基準を設けています。この基準は、単なる設備の有無や技術力だけでなく、「5S活動の定着度」を重視した評価項目で構成されています。
具体的には、工場訪問時に、5Sの観点では以下の点を徹底的にチェックします。
整理・整頓の確認:
- 工具や測定器が定位置管理されているか
- 作業台の上に、スマホなどを含む不要なものが置かれていないか
- 部品や材料が明確にラベリングされているか
清掃・清潔の確認:
- 床に切削屑やゴミが散乱していないか
- 機械設備が定期的に清掃されているか
- 作業者の作業服が清潔に保たれているか
- 工作機械の清掃を必ず行っているか
躾(習慣化)の確認:
- 5S活動が作業者全員に浸透しているか
- 朝礼や終礼で5Sに関する確認が行われているか
- 改善提案の仕組みが機能しているか
私が提携工場を訪問した際、最も印象に残ったのは、作業者全員が「自分の担当エリアの5S責任者」としての当事者意識を持っていることでした。作業終了後、自然に工具を定位置に戻し、床を清掃してから退社する。こうした習慣が根付いている工場こそが、安定した品質を提供できる工場なのです。日本だと、こういったマナーや当事者意識は刷り込まれてるものなので気づきにくいですが、私たちの常識は他国では当たり前ではないですし、このような光景は非常に日本っぽくて仕事をする上では安心しました。
このように5S活動が徹底されている工場では、効果が品質に直結します。
整理整頓された現場では、異常が目立ちやすく、不良の早期発見が可能になります。工具が定位置にない、部品が正しい場所にないといった「いつもと違う状態」がすぐに気づかれ、トラブルを未然に防げます。そして、清掃が行き届いた現場では、部品の混入や工具の取り違えといった作業ミスが大幅に減少します。特に、似た形状の部品を扱う場合、整理整頓されていない現場では混入リスクが非常に高くなります。 測定器が定位置管理され、定期的に校正されていると、測定精度が維持され、寸法精度の高い部品加工が可能になります。また、工具や部品を探す時間がゼロになることで、作業効率が向上し、納期遅延のリスクも低減します。特に日本は、納期やスピード感も大事な要素になってくるので、こうした小さなことを徹底することで、スムーズに仕事ができるようになります。
おわりに
ベトナム調達で品質トラブルを防ぐためには、「安い労働力」という表面的なメリットだけに目を向けるのではなく、「5S活動が本当に定着しているか」を見極めることが不可欠です。書類、カタログ、ポスターや先方の発言からではなく、実際の現場を自分の目で確認し、作業者の動きや工場の雰囲気を肌で感じることが、失敗しない工場選定の第一歩です。
株式会社いわいでは、独自の工場格付け基準をもとに、5S活動が徹底されたベトナムの提携工場と長期的なパートナーシップを築いています。海外調達を検討されている企業様は、ぜひ一度、当社の選定基準や提携工場の実態をご覧いただければと思います。品質トラブルのない、安定した海外調達の実現に向けて、私たちがお手伝いいたします。
こちらのコラムでは海外部品調達のよくあるトラブルについてより詳しく完全ガイドとしてお届けしております。ぜひご覧ください。
≫【完全ガイド】海外部品調達のよくあるトラブル10選とその解決策とは?

「国内品質×海外調達」を実現!海外協力工場の実力を、映像でご確認ください!
実際にいわいが海外で調達した製品事例をご紹介
続いて、実際に当社がベトナムをはじめとした海外で調達した精密部品の製品事例をご紹介いたします。
空圧機器用六角プラグ

この製品は、品質を担保するために、材料に日本製の真鍮(C3604)を使用することが必須条件でした。そのためご相談前のお客様は、コストが割高になる国内での生産を余儀なくされていました。
そこで当社では、お客様の指定する日本製の材料をベトナムに輸入し、現地で製造するというスキームをご提案。これにより、品質条件を満たしたまま、大幅なコストダウンを実現しました。
クランプブロック

このクランプブロックの調達において、お客様は深刻なサプライチェーンの問題に直面していました。近年、国内では黒染め処理に対応できる加工業者が年々減少しており、「精密なマシニング加工」から「繊細な表面処理」までを一貫して任せられるサプライヤーが、国内では見つからなくなってしまったとのでした。
この将来的なお悩みに対し、当社はベトナムの提携工場での「一貫生産」をご提案いたしました。加工から表面処理までを別々の企業で行う場合、工程間の輸送で傷がつくリスクや、品質管理の分断といった問題が避けられません。しかし当社では、マシニング設備を保有する加工業者と、黒染め処理設備を保有する表面処理業者と、それぞれで最適なパートナー企業を選定いたしました。これにより、当社による一元的な品質管理体制の下で、移動に伴う品質リスクをゼロにし、お客様の厳しい要求をクリアすることが可能となります。
A6061製 空圧機器用 マニホールドブロック

アルミ(A6061)製のマニホールドブロックです。マシニング加工後、アルマイト処理を施して仕上げています。
この製品は、機能面・外観面において、一切の傷が許されないという非常に厳しい品質基準が設けられていました。そのためお客様は、品質が安定し、かつ信頼できる検査体制を持つサプライヤーを求めていらっしゃいました。
この厳格な品質要求に対し、当社はベトナムパートナーが持つ高度な品質保証体制でお応えました。
水処理機械用 カップリング

こちらは、水処理機械に使用されるステンレス(SUS304)製のカップリングです。高精度な四角穴(公差:-0, +0.05)の加工が特徴です。
今回のご相談は、お客様が直面していた、深刻な事業継続の課題から始まりました。まず、長年この部品を供給していた国内の仕入先が廃業してしまい、代替となるサプライヤーが見つからず、やむなくお客様が自社での内製化に踏み切りました。しかし、その頼みの綱であった社内の加工部門も、深刻な人手不足により、担い手がいなくなってしまうという危機的な状況に陥っていました。
お客様が「新たな職人を探して採用するしかない」とまでお考えだった、この「人手不足」という経営課題に対し、当社は海外での一貫生産をご提案いたしました。
超々ジュラルミン製 分配ブロック

こちらは、機械部品として使用されるアルミ(超々ジュラルミン:A7075-T651)製の分配ブロックです。直角度0.01、平行度・平面度0.02、さらにはH7の穴公差など、複数の厳しい幾何公差が求められる、高精度なマシニング加工品でした。
この製品の最大の課題は、A7075-T651という特殊な材質にありました。お客様はこれまで、「この材料は、専門業者でなければ材料入手も加工も不可能だ」とお考えでしたが、そのためアルミダイカスト専門業者にサプライヤーが限定されることで、コストが高止まりしている状況にありました。
この長年の課題に対し、当社はベトナムの提携工場でのワンストップ生産をご提案いたしました。当社の幅広いネットワークを駆使することで、特殊なA7075材の安定調達ルートを確保することも可能です。さらに、高い技術力を持つパートナー企業にて、材料調達から高精度なマシニング加工、黒アルマイト処理、そして精密検査までを一貫して行うことで、大幅なコストダウンを実現いたしました。
お客様からは、「専門業者しか扱えない」という長年の思い込みが覆され、品質を維持したまま、これほど大きなコストダウンが実現できたことに、驚きと喜びの声をいただいております。
組立冶具(エア便 特急対応)

生産ラインで使用されるアルミ(A2017)製の組立治具です。今回は「受注後5日間」という、極めて短い納期でのご依頼でした。
今回のお客様は、急な仕様変更により、組立治具が特急で必要となったとのことでした。しかし、海外調達では船便輸送が基本となるため、このような超短納期での対応は不可能だとお考えでした。
この「特急対応」という非常に高いハードルのご要望に対し、当社はベトナムでの製造と、輸送手段を航空便(エア便)に切り替えるというスキームをご提案いたしました。製造から出荷までを最優先で進め、航空便を活用することで、受注からわずか5日間という、国内調達と変わらないスピードでお客様の元へ製品をお届けすることに成功しました。
丸頭特殊ボルト

機械部品として使用されるSUJ2製の丸頭特殊ボルトです。冷間加工で成形され、真球度S0.03という極めて高い精度が求められます。
このお話は、お客様が長年取引していた国内の冷間加工メーカーが廃業してしまい、この特殊ボルトのサプライチェーンが完全に途絶えてしまったという、深刻なご相談から始まりました。特に、SUJ2という材質の冷間加工と、その後の高周波焼入れまでを一貫して対応できる、高い技術力を持ったサプライヤーであったため、代替先を見つけるのは絶望的な状況でした。
この危機的な状況に対し、当社はベトナムでのワンストップ生産をご提案。当社のネットワークを駆使し、SUJ2材の冷間加工に対応できるだけでなく、現地で高周波焼入れまで一貫して行えるという、お客様の要求を完璧に満たすパートナー企業をベトナムにて選定し、お客様とマッチングして解決いたしました。
丸頭特殊ボルトアッセンブリ

こちらは、特殊ボルト(SCM440他)と複数の部品からなる、丸頭特殊ボルトアッセンブリです。各種サイズを取り揃え、最終の梱包まで含めたOEM供給に対応しています。
このお話は当初、お客様が取引していた国内の部品メーカーが廃業してしまい、構成部品である「特殊ボルト単品」の調達先を探している、というご相談から始まりました。
しかし、当社がお話をお伺いする中で、お客様がその特殊ボルトを調達後、他の部品と組み合わせて社内で組立・梱包作業を行っており、その工数や管理コストが大きな負担となっていることが分かりました。そこで当社は、単にボルト単品を製造するのではなく、関連部品の調達から組立、梱包までをすべて一貫して海外で行う「アセンブリ供給」をご提案いたしました。組立工程の半自動化なども含めた、トータルコストダウンのスキームを設計いたしました。
ベトナムでの金属加工品の調達は、株式会社いわいにお任せください!
今回お伝えしたように、ベトナム調達には大きなメリットがある反面、「文化や商習慣の違い」や「複雑な物流・関税によるコスト逆転」など、現場レベルでの複合的なリスクが潜んでいます。こうした海外調達ならではの「現場の壁」は、一般的な対策だけでは防ぎきれません。
いわいでは、厳しい審査をクリアしたベトナム優良工場のネットワークを活かし、独自の「日本品質」基準で最適なサプライヤーを選定しています。さらに、現地スタッフと連携した「Zoomリアルタイム検品」による手戻り防止や、日本語対応スタッフを介したスムーズな進捗管理、そして見落としがちな輸送・通関を含めた複雑な貿易実務のワンストップ代行により、品質・納期・コスト面のリスクを極限まで低減します。
国内工場の廃業リスク(BCP対策)への備えから、メイン拠点としての活用まで。貴社の生産計画を守り、「確実な納品」と「安心の品質」を実現するベトナム部品調達は、株式会社いわいにお任せください。


